裏声の出し方|きれいで芯のある裏声を出すコツと練習
裏声は声帯を薄く引き伸ばして軽く鳴らす高い声。きれいで芯のある裏声のコツは、力で押さず息を流すこと。ため息・フクロウの声・息を混ぜて上がる出し方の手順、かすれる・弱い・裏返るときの直し方、地声・ファルセット・ミックスボイスとの違いまで、初心者向けにやさしくまとめました。

裏声は、のどの奥にある声帯(こえたい=音を作る2枚のヒダ)を薄く引き伸ばし、軽くふれあわせて鳴らす高い声です。きれいで芯のある裏声を出すコツは、力で押し上げるのではなく、ため息を「そのまま音にする」ように息をやさしく流すこと。この記事では、裏声が出るしくみから、自宅で今日からできる出し方の手順、かすれる・弱い・裏返るときの直し方まで、順番にやさしく解説します。
きれいな裏声が出ない…あなただけではありません
裏声が「かすれる」「弱くて聞こえない」「そもそも出し方がわからない」と感じるのは、才能ではなく、まだコツを知らないだけのことがほとんどです。裏声は日常の会話でほとんど使わない声なので、最初は誰でもうまく扱えません。出せないのが当たり前の状態から始まる、と思ってください。
とくに男性は、ふだん低めの地声(じごえ=話すときの普通の声)で生活しているため、裏声への切り替えに慣れていません。「男は裏声が出しにくい」と言われがちですが、体のつくりの問題というより、単に使い慣れていないだけです。手順どおりに練習すれば、男性でも軽くてきれいな裏声に近づけます。
よくあるのが、高い声を出そうとして首やあご、肩にぐっと力が入ってしまうパターンです。力めば力むほど裏声は出にくくなります。まずは「がんばらないほど出る声」なのだと知ることが、最初の一歩になります。
裏声のしくみ|声帯を薄く引き伸ばして軽く鳴らす声
裏声は、声帯を薄く引き伸ばして、ふれあう部分を小さくし、軽く鳴らす声です。声帯は左右2枚のヒダで、これが閉じて息で震えると音になります。地声では厚くしっかり閉じて力強く鳴らしますが、裏声ではヒダを薄く伸ばし、ふちだけをそっと合わせて鳴らします。だから軽くて高い、やわらかな音になるのです。
イメージとしては、ゴムを軽く引っぱると細く高い音で震えるのと似ています。太く強く鳴らすのが地声、細く薄く鳴らすのが裏声、と考えるとわかりやすいでしょう。
ここで大事なのは、裏声は「息のスピードで鳴らす声」だということです。声帯を無理に締めて音量を出すのではなく、適度な息を流してヒダを震わせます。だから、のどに力を込めるほど鳴りにくく、息をなめらかに流すほど楽に出ます。「押す」より「流す」——これが裏声の基本の感覚です。
裏声の出し方3ステップ|ため息・フクロウ・息を混ぜて上がる
きれいな裏声を出す近道は、「①ため息を音にする → ②フクロウの『ホーホー』→ ③息を混ぜたまま音階で上がる」の順で、力を抜いたまま高さを足していくことです。いきなり高い声を狙わず、脱力から入るのがポイントです。次の手順を1日5分から試してみてください。
- ため息を音にする:軽く「はぁ〜」とため息をつき、その息にそっと「ほー」と声を乗せます。息が8割、声が2割くらいの、消え入りそうな高さでかまいません。これを5回。裏声の「軽く鳴らす」感覚をつかむ練習です。
- フクロウの「ホーホー」:フクロウの鳴きまねのように、力を抜いて「ホー、ホー」と高めに響かせます。口の中を軽く広げ、のどではなく頭のうしろに声を逃がすイメージで。喉に力が入らない高さを探しながら5〜10回。
- 息を混ぜたまま高さを上げる:出しやすい高さの「ほー」から、ため息のやわらかさを保ったまま、少しずつ高さを上げていきます。上げるほど息を少しだけ足すのがコツ。届く範囲でよいので、無理に上を狙わないでください。
NG例として、高い音を「もっと大きく、もっと高く」と力で押し上げるのは逆効果です。音量を上げようとした瞬間にのどが締まり、かすれたり裏返ったりします。裏声はむしろ小さめの音量から育てるもの、と覚えておきましょう。うまく出ないときは、いったんため息のステップに戻ると、力みがリセットされます。
動画でも確認してみましょう
文字だけだと分かりにくいきれいな裏声の出し方は、実際の映像を見ると感覚をつかみやすくなります。(下は参考になる解説動画です)
かすれる・弱い・裏返るときの直し方
裏声のつまずきは大きく3種類あり、それぞれ原因と直し方がちがいます。自分がどれに当てはまるか、当てながら読んでみてください。
- かすれて息漏れする:息が多すぎて、声帯がしっかり合っていない状態です。息の量を少し減らし、「ほー」より「ふー」に近い、細くまとまった息で鳴らすと芯が出てきます。息を吐き切らず、軽く支える感覚を持ちましょう。
- 弱くて小さい・通らない:息と声のバランスが息側に寄りすぎています。ほんの少しだけしっかり鳴らすつもりで、「ん〜」と鼻に響かせるハミングから始めると、少ない息でも通る裏声に近づきます。力むのではなく、響く場所を探すのがコツです。
- 地声からいきなり裏返る・段差ができる:地声と裏声の切り替わり目(換声点=かんせいてん)で、声が急にスコッと切り替わる状態です。低めの音と、その1オクターブ上の裏声を「ほ〜」となめらかに行き来し、あいだをつなぐ練習が効きます。急がず、境目をゆっくり通るのがポイントです。
なお、練習中にのどの痛みや違和感が続くときは、無理をせず休みましょう。声がれや痛みが長く続く場合は、耳鼻咽喉科など専門医に相談してください。
地声・ファルセット・ミックスボイスとの違い
裏声まわりの言葉は紛らわしいので、ここで軽く整理しておきます。細かく覚える必要はありませんが、違いを知っておくと練習の目印になります。
- 地声(じごえ):ふだん話すときの、厚くしっかり鳴る声。力強いですが、高くなると出しにくくなります。
- 裏声(うらごえ):声帯を薄く伸ばして軽く鳴らす高い声。この記事で練習してきた声です。
- ファルセット:裏声の中でも、とくに息を多く含んだ、軽くてやわらかい響き。ふわっとした表現に向きます。
- ミックスボイス:地声と裏声の“いいとこ取り”のような、中間の質感で高音を出す声。裏声のような軽さを保ちつつ、地声に近い芯を足したものと考えるとイメージしやすいでしょう。
まずはきれいな裏声を安定して出せるようになることが、この先ミックスボイスや高音表現へ進むときの土台になります。裏声づくりは遠回りではなく、高音の近道です。
芯のある裏声に育てる続け方と、録音で自分の声を確かめる
裏声を伸ばすいちばんの近道は、短くてよいので毎日続けることと、ときどき録音して自分の声を客観的に聴くことです。というのも、歌っている最中の自分の声は、体の中を通っても聞こえるため、実際より良く聞こえてしまい、かすれや裏返りに気づきにくいからです。自分の耳だけでは、自分の裏声を正しく聞けていない、と思っておくくらいがちょうどよいのです。
だからこそ、スマホのボイスメモでかまわないので練習を録音し、少し時間を置いてから聴き返してみてください。「思ったより息が漏れている」「この高さでいつも裏返る」といった自分のクセが、外から見るとはっきりわかります。そのクセ(=どんな症状でつまずいているか)が見えると、次にどの練習に力を入れればいいかがはっきりします。
自分の声のクセを見極める部分は、耳だけだと難しいものです。ボイとれのようなアプリでは、出している声の高さがその場でグラフに表示され、裏返りやすい場所や息漏れの傾向を、声のクセごとに整理してくれます。自分のつまずきが「裏返り」なのか「息っぽさ」なのかがわかると、そこに合った練習に的をしぼれます。
まずは1日5分のため息練習と、週に一度の録音チェックから。焦らず続けるうちに、力まなくても軽く、それでいて芯のある裏声が、少しずつ自分のものになっていきます。



