発声・ボイトレ基礎

自分の歌声を録音すると気持ち悪いのはなぜ?録音のやり方と、聴き返すときの4つのチェックポイント

録音した自分の歌声が気持ち悪く聞こえるのは、あなたの声が悪いからではありません。骨伝導で聞いていた声と、実際に外に出ている声が違うだけです。そして本当の自分の声は、録音でしか聞けません。スマホでの録音のやり方と、聴き返すときの4つのチェックポイントを解説します。

ボイとれ!編集部ボイとれ!編集部
自分の歌声を録音すると気持ち悪いのはなぜ?録音のやり方と、聴き返すときの4つのチェックポイント

録音した自分の歌声が気持ち悪く聞こえるのは、あなたの声が下手だからではありません。あなたがこれまで聞いていた「自分の声」が、骨を伝わって届いていた特別な音で、録音で聞こえるほうが、他人がいつも聞いている本当のあなたの声だからです。

つまり、気持ち悪いという感覚は正常な反応です。そして残酷ですが重要な事実として、本当の自分の声は、録音でしか聞けません。歌が上手くなりたいなら、この違和感を通り抜けるところからしか始まりません。

ただ、録音を聴いて「なんか下手だな」で終わってしまうと、何も変わりません。この記事では、スマホでの録音のやり方と、**聴き返すときに何を聴けばいいのか(4つのチェックポイント)**まで解説します。

なぜ録音した自分の声は「別人」に聞こえるのか

自分の声を聞くルートが、2つあるからです。

歌っているとき、あなたの耳には次の2つが混ざって届いています。

  1. 気導音(きどうおん):口から出た声が空気を伝わって、耳の穴から入ってくる音。他人が聞いているのはこちらだけです。
  2. 骨導音(こつどうおん):声帯の振動が、頭蓋骨や顎の骨を直接伝わって、内耳に届く音。自分にしか聞こえません

問題は、骨を伝わる音の性質です。骨は空気より低い音をよく伝えるため、骨導音は低音が強調され、太く・厚く・豊かに聞こえます。つまりあなたが歌いながら聞いている自分の声は、低音がたっぷり乗ったブースト済みの音。

そこから骨導音が丸ごと抜け落ちたのが、録音の声です。低音の下支えが消えるので、実際より 薄い・高い・軽い・ペラペラ に感じます。この落差が「気持ち悪い」「別人みたい」の正体です。

ここで大事なのは、録音のほうが劣化しているのではないということ。むしろ逆で、いつも聞いていた自分の声のほうが、自分だけが聞ける「盛れた」バージョンでした。カラオケで友達に聞かれている声、スマホに残る声、聴いてもらいたい相手に届く声——すべて録音側の声です。

だから練習で直すべき対象も、録音側の声です。 骨導音を頼りに「今いい感じに歌えてる」と判断している限り、他人に届いている声とはズレたまま練習を続けることになります。

スマホでいい。歌の録音のやり方

高価なマイクも、録音アプリの課金も要りません。スマホの標準のボイスメモで十分です。目的は良い音で録ることではなく、自分のクセを見つけることだからです。機材にこだわり始めると、それ自体が練習を先延ばしする理由になります。

置く位置と距離

  • スマホは口から30〜50cm離して、正面に置く(腕を軽く伸ばした距離より少し近いくらい)。近すぎると息がぶつかってボフボフ言い、遠すぎると部屋の反響ばかり拾います。
  • 机の上に直接置かず、タオルや本を1枚敷いて少し高くする。机に触れていると振動を拾います。
  • カラオケボックスではなく、まずは自宅の普通の部屋で。カラオケの部屋はエコーが強く、下手も上手いも均されて分かりにくくなります。

伴奏との音量バランス

ここが一番失敗しやすいポイントです。

  • 伴奏はイヤホン(片耳)で聴き、声だけをスマホで録るのが理想です。伴奏がスピーカーから出ていると、録音では伴奏が大きすぎて自分の声が埋もれ、音程のズレもリズムのズレも聴き取れません。
  • 片耳だけにするのは、もう片方の耳で自分の生の声も聞いておくためです。両耳を塞ぐと声を張りすぎる傾向があります。
  • イヤホンがなければ、伴奏の音量をかなり小さめにして、声が主役になるようにしてください。

回数と頻度の目安

  • 1曲を通しで1回、まず録る。何度も録り直して「一番よく歌えた1回」を残そうとしないでください。上手く録れた1回ではなく、普段のあなたの歌が見たいからです。
  • 録ったらその場ですぐ聴き返す。時間を空けると、そのとき自分が何を感じて歌っていたかを忘れます。
  • 週に1〜2回でいい。毎日録る必要はありません。ただし同じ曲を使い続けること。曲を変えると、上達したのか曲が簡単になっただけなのか分からなくなります。
  • 録音は消さずに残す。1か月後、3か月後に聴き比べたときが、独学で一番モチベーションが上がる瞬間です。

NG例:気持ち悪くなって最初の10秒で止める/サビだけ録る/上手く歌えた回だけ保存する/音量を小さくしてぼんやり聴く。いずれも「見たくないものを見ない」ための行動で、上達を止めます。

録音を聴き返すときの4つのチェックポイント

「なんか下手」で終わる最大の原因は、何を聴けばいいのかを知らないまま聴いていることです。全体をぼんやり聴くのをやめて、次の4つを1回ずつ、別々に聴いてください。1回の再生で1項目だけを追うのがコツです。

1. 音程が「下から」入っていないか

フレーズの最初の音に注目します。狙った音にスパッと当たっていますか?それとも、下の音からズルッと持ち上げて合わせにいっていませんか

後者が全フレーズで起きているなら、それは表現ではなく癖です。歌っている本人には「ちゃんと合っている」としか聞こえないので、録音でしか気づけない典型例です。詳しくは歌のしゃくりとはで、意図的なしゃくりと癖の見分け方を解説しています。

音そのものが合っていない(外れている)と感じる場合は、音程が取れない原因を先に読んでください。音程は「聞こえていない」のか「聞こえているが声にできない」のかで、やるべき練習がまったく変わります。

2. リズムが走っていないか

伴奏と自分の声のタイミングだけを聴きます。歌詞を追わず、手拍子を打つように聴くのがコツです。

  • 走っている(伴奏より前に出る):緊張・息が足りない・自信のなさで前のめりになっているとき
  • もたる(伴奏より遅れる):音を探しながら歌っているとき

音程ばかり気にしている人ほど、リズムのズレに気づいていません。心当たりがあればリズム感を鍛える方法へ。

3. 高音で声が詰まっていないか

サビや高い音のところだけを聴き返します。声を出しているのに、音が前に飛んでこない感じがしませんか。喉で押し出すように、力んだ「ぐっ」という質感が乗っていませんか。

歌っている最中は、力んでいるほど骨導音は「よく響いている」と感じます。力み=自分には気持ちよく、他人には苦しく聞こえるという、もっとも録音向きの症状です。

高音だけで起きるなら高音の張り上げ・喉が締まるのを直す方法、音域に関係なく全体的に力んでいるなら喉に力が入るのを直す方法を読んでください。

4. 息の音がうるさくないか、逆に息が足りていないか

声そのものではなく、声の周りの空気の音を聴きます。

  • 「ハァ」という息の音が声に混じって、芯がない・遠くまで届かない感じ
  • フレーズの終わりで声がしぼんで消えていく
  • 息継ぎの音が「ハッ」と大きく入っている

これらは全部、息の使い方のサインです。歌のブレス(息)とはで、息の量と声の関係を確認してください。

「なんか下手」で終わらせないために——症状に名前をつける

4つのチェックポイントを挙げたのには理由があります。「下手」は直せませんが、「症状」は直せるからです。

「なんか下手」は、感想であって診断ではありません。感想からは次の行動が出てきません。一方で「サビの高音で喉を締めて張り上げている」まで言語化できれば、そこから先は明確です——脱力の練習をすればいい。「フレーズの頭が全部下から入っている」と分かれば、音を一発で当てる練習をすればいい。

つまり上達とは、漠然とした「下手」を、名前のついた症状に分解していく作業です。録音は、そのための唯一の材料になります。

だからこそ、録音を聴くときは「上手いか下手か」をジャッジしないでください。あなたがやるのは採点ではなく、観察です。4項目を1つずつ、「これは当てはまる/当てはまらない」と切り分けていくだけでいい。

「録音すると下手に聞こえる」を扱った動画

録音の声に「慣れる」ことと、録音の声を「直す」ことは別だという整理に注目して聴いてみてください。

録音を聴いても、自分の症状までは分からない

ここまで読んで、正直こう思った人がいるはずです。

「4つのポイントを聴けと言われても、自分の音程がズレているかどうか、自分の耳では分からない

その感覚は、まったく正しいです。ここが録音の限界でもあります。

録音は「他人が聞いている自分の声」を教えてくれますが、その声のどこがどうズレているかまでは教えてくれません。音程が合っているかを判断するには、正解の音を正確に覚えている耳が必要です。高音の力みを聴き分けるには、力んでいない声を知っている耳が必要です。そしてその耳は、これから作っていくものです。

つまり順番はこうなります。

  1. 録音する(=他人が聞いている本当の声を手に入れる)
  2. その声を、症状として切り分けてもらう(=自分では判定できない部分)
  3. 症状に効く練習をする

2つ目のステップを埋めるのが、声の診断です。声のクセを4タイプに診断するでは、張り上げ・裏返り・息っぽさ・つながった声の4タイプに分けて、いま自分の声がどれに当てはまるのかを整理しています。アプリ「ボイとれ!」の診断も、歌った声を解析して、この4つのどれに近いかと、そこに効くレッスンを出す仕組みです。

録音は、上達の入口です。ただし入口に立っただけでは進めません。録って、症状の名前を知って、その症状に効く練習をする——ここまで来て、はじめて録音が上達に変わります。

今日は、スマホのボイスメモを開いて、いつもの1曲を通しで1回録るところから始めてください。気持ち悪くて当然です。そこに映っているのが、他人がずっと聞いてきたあなたの声で、これから直していける声です。

#録音#客観視#ボイトレ基礎#音程#リズム

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