ドラマツルギー(Eve)の音域|最低音lowG#〜地声最高音hiB・裏声hiC#とオク下・キー下げの目安
Eve「ドラマツルギー」(2017年)の音域は、地声最低音G#2(lowG#)〜地声最高音B4(hiB)、裏声最高音C#5(hiC#)。低音から高音まで約2オクターブ超と幅が広く、速いテンポで息継ぎの余裕が少ないのが難しさの正体です。原曲キーの高さゆえオクターブ下げで歌う人が多いので、キーを下げる目安と下げすぎの境界、原曲キーで歌える人の条件、Aメロ・サビ・裏声箇所ごとの歌い方を、複数の音域分析サイトのクロスチェックをもとに整理しました。初音ミクによるボカロカバー版もありますが、本文の音域はEve本人版で統一しています。

Eve「ドラマツルギー」(2017年)の音域は、**地声最低音がG#2(lowG#)、地声最高音がB4(hiB)、裏声最高音がC#5(hiC#)**です。低いところから高いところまで約2オクターブ超と幅が広く、しかもテンポが速くて息継ぎの余裕が少ないのが、この曲の難しさの正体です。
原曲キーで無理なく歌えるのは、G#2という低さをしっかり鳴らせて、なおかつサビで繰り返し出てくるhiB前後の高音を張り上げずに出せる人。つまり「低音の底」と「高音の天井」の両方が広い人向けの曲です。原曲キーが高いためオクターブ下げ(オク下)で歌う人も多く、この記事ではその目安も含めて整理します。なお初音ミクによるボカロカバー版もありますが、この記事の音域はすべてEve本人が歌う版で統一しています。
ドラマツルギーの音域データ
複数の音域分析サイト(vocal-range.com「J-POP 音域の沼」、レオンの音域紹介所ほか)をクロスチェックした結果、音名は次のとおりで一致しています。
| 項目 | 音名(国際式) | 音名(日本式) | 出てくる場所 |
|---|---|---|---|
| 地声最低音 | G#2 | lowG# | Aメロ・低音フレーズ |
| 地声最高音 | B4 | hiB | サビ中心 |
| 裏声最高音 | C#5 | hiC# | 高音フレーズ |
音名は数字が大きいほど高い音です。日本式の「low」は低め、「mid」は中間、「hi」は高めの帯域を指します。地声だけで見るとlowG#〜hiBで約2オクターブ+3半音、裏声のhiC#まで含めるとさらに広がります。
低音のlowG#は男性の平均的な最低音より低めで、高音のhiB・hiCはミックスボイス(地声と裏声を混ぜたような高音の出し方)が必要になる帯域です。この曲は「上が高い」だけでなく「下も低い」=上下の落差そのものが大きいのがポイントで、そこが後述する難しさにつながります。
この曲が難しい理由・歌いやすい理由
上下の落差が大きく、低音と高音を1曲で行き来する
最大の負荷は、最高音の絶対値そのものよりも低音lowG#と高音hiBを同じ1曲の中で何度も往復する点にあります。低音を鳴らそうとして喉を下げた状態のまま高音に飛ぶと引っかかり、高音を意識しすぎると今度は低音がスカスカになる。この「重心の切り替え」を素早くこなす必要があるため、音域の数字以上に体感の難易度が上がります。
テンポが速く、息継ぎの余裕が少ない
Eveの楽曲全般に言えることですが、この曲も言葉数が多く譜割りが細かいため、フレーズの合間に息を吸う隙間が短めです。高音を出すには十分な息の支えが要りますが、その息を吸うタイミングが足りないと、サビの後半で声が痩せて上ずってきます。高音が出る・出ない以前に、息が最後まで持つかが問われる曲です。
サビのhiBは「一発」ではなく「繰り返し」来る
hiBは曲中に一度だけ登場する飛び道具ではなく、サビの中で周辺の高音(hiA前後)とセットで繰り返し出てきます。「一回なら出せる」高さでも、通しで歌った終盤に同じ高さを何度も出し続けられるかは別問題。滞空時間(高音域に張り付いている時間)が長いタイプの曲だと理解しておくと、練習の設計がしやすくなります。同じボカロP出身の作り手による、音域が広く高音が続く曲としては「命に嫌われている。」(カンザキイオリ)の音域(mid1G〜hiG)も、この「高音の繰り返しに耐えるスタミナ」を試す近い一曲です。
原曲キーで歌えるのはどんな人か
カラオケで録音しながら、次の3つを「1曲通した後」に判定してください。一発で出るかではなく、体力を使った状態で出せるかで見ます。
- サビのhiBを、張り上げずに八分目の力で繰り返し出せるか。 力いっぱい一回出せるだけでは足りません。喉を絞めずに何度も置きにいける余裕があるかを見ます。
- Aメロの低音lowG#が、消え入らずに芯を持って鳴っているか。 低音がボソボソと沈むと、曲の土台が抜けて聞こえます。
- 2番の終盤まで、息切れせず言葉を流し続けられるか。 速いテンポに詰まった言葉を、最後まで慌てずに乗せられるかどうか。
3つとも満たせるなら原曲キーが合っています。1つでも崩れるなら、次のキー調整を検討しましょう。
キーを下げる目安(オク下も含めて)
原曲キーが高いため、男性を中心にオクターブ下げ(オク下)や数音のキー下げで歌う人が多い曲です。ただしこの曲は低音がlowG#と元々かなり低いので、下げすぎると今度は低音が沈んで聞こえなくなるというジレンマがあります。
- −2:サビの最高音がhiA前後に下がり、高音が得意な男性なら現実的なライン。低音もまだ届く範囲です。
- −3〜−4:多くの男性が「原曲キーは無理だがこれなら」と感じる目安。ただしlowG#が−4ではF2付近まで下がり、低音がかなり厳しくなります。下げしろは思ったほど大きくないと意識してください。
- オク下(−12):高音は一気にラクになりますが、Eveの高音の疾走感が失われて曲の印象が変わります。「まず1曲通して歌い切る」練習用としては有効ですが、本番でカッコよく聴かせたいなら、オク下一択にせず「一部だけオク下・サビは原キー付近」など部分的に使い分けるのがおすすめです。
女性が歌う場合は、地声最高音hiBが元々女性の得意帯域に近いため、原曲キー〜+1〜+2で低音のlowG#が上がって歌いやすくなるケースがあります。まずは原曲キーで低音の届き具合を確かめてから調整してください。
キー調整そのものへの抵抗がある人は、キーを下げるのはダサいのかを整理した記事も参考にしてください。自分の声に合わせて調整するのは、上手い人ほど当たり前にやっていることです。
難所と歌い方
Aメロ|低音を「置きにいく」
AメロにはlowG#付近の低音が出てきます。ここで力んで太くしようとすると喉が固まり、後の高音に響きます。低音は押し出さず、息を軽く流して「下に置きにいく」意識で。低音がどうしても沈むなら、無理に鳴らそうとせず息の量を少し増やして輪郭だけ保つと聞こえやすくなります。低音の出し方に不安がある人は、息継ぎのコツをまとめた記事で息の支えから見直すと安定します。
サビ|hiBを張り上げない
サビはhiA〜hiBの高音が繰り返し来ます。ここを地声で押し上げようとすると喉が絞まり、2回目・3回目で音程が上ずってきます。狙いは「張り上げ」ではなく、地声と裏声を混ぜたミックス寄りの出し方で高音を軽く置くこと。喉に力が入って苦しくなる人は、高い声の出し方のコツで力みを抜く手順から取り組んでください。
裏声箇所・換声点|hiC#への切り替え
裏声最高音hiC#が出てくる箇所や、地声から裏声へ移る換声点(声が切り替わる境目)では、切り替えが遅れるとスカッと裏返ったり、逆に地声で突っ張って引っかかったりします。ここは事前に「どこで裏声に渡すか」を決めておくと安定します。換声点で声が裏返ってしまう人は、換声点をなめらかにつなぐ練習を先にやっておくと、この曲のサビが格段にラクになります。
全体|速いテンポに息を合わせる
上下動が激しくテンポも速いので、フレーズごとに「どこで吸うか」を決めておくのが有効です。息の計画を立てずに勢いで歌うと、後半で確実に息切れします。
原曲キーで出ない=音域不足とは限らない
「サビのhiBが出ない」「低音が届かない」と感じても、それが必ずしも音域が足りないせいとは限りません。原因が出し方のクセ——高音を張り上げてしまう、喉を絞めてしまう、換声点で裏返ってしまう——にある場合、キーを下げても同じ苦しさがそのまま再現されます。実際、キーを2つ下げても「なぜかまだ苦しい」という人の多くは、音域ではなく発声のクセが引っかかっています。
やっかいなのは、自分の声は自分の耳では正しく聞こえないことです。歌っている本人には、骨を伝わって聞こえる声(骨伝導)が混ざるため、張り上げているのか、裏返りかけているのかを、その場で正確に判断するのはほぼ不可能です。
だからこそ、まずは自分の歌を録音して、どこでどう詰まっているのかを客観的に見極めるのが近道です。ドラマツルギーのように上下動が大きく高音が続く曲は、自分の声のクセがはっきり出るので、症状を診断する題材としてもうってつけ。声のクセを4タイプで診断する方法を入り口に、自分がどのタイプでつまずいているのかを切り分けてから、そのタイプに合った練習に進むのが、遠回りに見えていちばんの近道です。



