ミックスボイス・高音

地声から裏声で裏返るのはなぜ?換声点の段差をなくす練習【3ステップ】

高い音で声が裏返る、地声と裏声で声色がガラッと変わる——その正体は「換声点」の段差です。しくみをかみ砕いたうえで、今日からできるオクターブのつなぎ練習と、目指す音を耳で確かめられるお手本音源を紹介します。

ボイとれ!編集部ボイとれ!編集部
地声から裏声で裏返るのはなぜ?換声点の段差をなくす練習【3ステップ】

高い音になると声がスカッと裏返る、地声から急に弱い声(裏声)に切り替わって声色がガラッと変わる。こうした「ひっくり返り」は、地声と裏声の境目でのつなぎ方を少しずつ変えていけば、なめらかに近づけられます。境目をなくそうと力むより、境目を「ゆっくり行き来して慣らす」ことが近道です。この記事では、なぜひっくり返るのかをかみ砕いてから、今日から自宅でできる練習と、目指す音のお手本音源までまとめて紹介します。

歌の途中で声が裏返ると、それだけで気持ちが萎えてしまいますよね。でも、これは喉が壊れているわけでも、才能がないわけでもありません。声の仕組み上、多くの人が同じ場所でつまずくポイントがあるだけです。順番に見ていきましょう。

なお、高音がうまく出ない原因は裏返りだけとは限りません。喉を締めて張り上げてしまうタイプなど、他のつまずき方もあります。自分がどのタイプに近いかは高音が出ない原因|出し方を練習しているのに出ない人へで整理しています。

あなたはこのタイプ?まずはセルフチェック

次のような心当たりがあれば、この記事の練習が合っています。ひとつでも当てはまれば読み進めてみてください。

  • サビの高いところで、声が「ひっくり返って」スカッと抜けてしまう
  • 低い〜中くらいの音は力強いのに、ある高さを境に急に声がか細くなる
  • 地声(普段しゃべる太い声)と裏声(フワッと軽い声)で、声色がまるで別人のように変わる
  • 高い音を出そうとすると、喉がキュッと締まる・力んでしまう
  • 裏声はいちおう出るけれど、地声とのつなぎ目に「段差」を感じる

これらは、声が切り替わる境目(後で説明する「換声点」)でのバランスがうまく取れていないサインです。裏を返せば、そのバランスは練習で整えていける、ということでもあります。

なぜ高い音で裏返るのか(換声点のしくみ)

裏返りが起きるのは、声を作る筋肉の「担当交代」が急すぎるからです。ここが分かると練習の意味が腑に落ちます。

私たちの声は、喉にある声帯という2枚のヒダが振動して生まれます。低い音では声帯が短く縮まって、しっかり閉じた「地声」の状態。高い音になるにつれ、声帯は引き伸ばされて薄くなり、やがて「裏声」の状態へと移っていきます。この地声から裏声へ切り替わる境目の音域を、換声点(かんせいてん)と呼びます。人によって高さは違いますが、誰にでも必ずどこかに存在するものです。

問題は、この切り替わりが「なだらかな坂」ではなく「段差」になっているとき。地声のまま高い音を押し切ろうとして限界を超えた瞬間、筋肉のバランスが崩れて一気に裏声へ落ちる——これが「スカッと裏返る」正体です。逆に段差が大きいと、地声と裏声で声の太さや響きが別物になり、声色がガラッと変わって聞こえます。

つまり目指すのは、地声を無理に上へ引っ張ることでも、早々に裏声へ逃げることでもありません。境目の前後で、地声の芯を少し抜きつつ裏声の軽さを少し混ぜて、両者の「中間の混ざった声」を通り道として作ってあげること。この混ざり具合を整える練習が、なめらかなつなぎ目を育てます。なお、練習中に喉の痛みや違和感が続く場合は無理をせず、必要なら耳鼻咽喉科など専門医に相談してください。

今日からできる、つなぎ目をなめらかにする練習

つなぎ目を整える一番の近道は、境目をゆっくり何度も行き来して、体に「なだらかな坂」を覚えさせることです。強く出すより、軽く・小さくが鉄則です。次の3ステップを、リラックスした状態で試してみましょう。

1. オクターブで跳んでつなぐ(1日3〜5回) 「ブー」と唇を軽く閉じ気味にして、低い音から一気に1オクターブ上(同じ音名で高いほう)へ跳びます。低いほうは地声、高いほうは軽い裏声寄りでOK。跳んだ瞬間に力まず、上の音を「フワッ」と置くイメージです。声を張り上げると段差が戻るので、上の音ほど音量を落とすくらいがちょうど良いです。

  • NG例:上の音でアゴを突き出して押し込む/口を大きく開けて叫ぶ

2. 「ネイ」で境目をゆっくり行き来する(片道5秒×3回) 「ネイ〜」と少し鼻にかかる軽い声で、換声点をまたいで低い音と高い音をサイレンのように往復します。ここでは跳ばず、境目を通過する瞬間を「そーっと」通ります。段差を感じたら、その音の手前で少しだけ息を増やし、地声の力を抜いてみてください。

  • NG例:境目で息を止める/勢いをつけて一気に通り抜ける

3. 裏声を「ほんの少し」混ぜてみる(各2回) 中くらいの高さの音を地声で伸ばしながら、途中で裏声の軽さをスプーン一杯だけ足すつもりで、声を少し細くします。地声100か裏声100かの二択ではなく、その「あいだ」を探る感覚です。混ざった声が一瞬でも出れば大成功。毎日その一瞬を増やしていきます。

いずれも、喉より先に「息の流れ」を意識するとうまくいきやすいです。うまく混ざらない日があっても普通のことなので、焦らず続けてみてください。換声点をなめらかに越える技術に長けた歌い方の実例は、キタニタツヤの歌い方や、地声・ミックスボイス・裏声を自在に使い分けるVaundyの歌い方でも紹介しています。

お手本を聴いてみましょう

次の音源は、さきほどの練習1(オクターブで跳んでつなぐ「ブー」)を、ピアノに合わせてスケールをひと回ししたお手本です。低い音の地声から、高い音の軽い声へ、段差なくつながっていく感じに注目してください。まずはピアノに合わせて、一緒に口ずさんでみるのがおすすめです。

跳ぶ瞬間の力の抜き方や、上の音の軽さを真似してみてください。「こんなに軽くていいんだ」と気づけると、それだけで裏返りが減ることもあります。

声が裏返る2か所の境目を耳で確かめる

練習を「積む順番」と、自分の声の聴き方

なめらかなつなぎ目は、単発の練習より「積む順番」で仕上がります。境目でのひっくり返りをまず落ち着かせてから、地声と裏声の音色をなじませ、最後に残った段差を消していく——この流れが自然です。

ボイとれ!では、この症状に向けて「声の裏返りをなくす」→「地声と裏声をなじませる」→「つなぎ目の段差を消す」という順番でレッスンを組んでいます。今日紹介したオクターブの「ブー」や、境目を往復する練習も、この流れの中でお手本と一緒に進められるようになっています。同じ課題を少しずつ難しくしながら繰り返すので、迷わず一段ずつ登れます。

つなぎ目の練習曲を選ぶときは、階段状に音が上がる曲から慣らすのがコツです。→ 裏声の練習曲|音域つきおすすめとタイプ別の選び方

換声点の切り替えがどれだけ身についたかを試す実例としては、YOASOBIの曲が分かりやすい物差しになります。テンポが速いうえに地声と裏声の行き来が短い間隔で何度も出てくるため、段差が残っていると必ずそこで引っかかるからです。→ YOASOBIの歌い方|速いメロディと高音を歌いこなすコツ

そして続けるうえで一番大事なのが、自分の声を「聴き返す」習慣です。歌っている最中の声は、骨や体の中を伝わって聞こえるため、実際に外へ出ている音とはかなり違って届きます。だから「うまくつながった気がするのに、録音を聴くと段差が残っている」ことは珍しくありません。だからこそ、練習を録音して後から聴き返し、どこで裏返るのか・どんなクセがあるのかを自分の耳で見極めることが、上達の分かれ道になります。自分のクセが見えれば、直すべき一点がはっきりします。焦らず、今日の一瞬の「混ざった声」を、明日はもう少しだけ長く。その積み重ねが、なめらかなつなぎ目をつくっていきます。

#ミックスボイス#換声点#高音#裏声#地声#裏返る#ボイストレーニング#歌い方

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