カラオケの飲み物おすすめは?喉にいい・悪いと言われる10種を「根拠の強さ」で仕分け
カラオケの飲み物は常温の水が基本です。ただし飲み物は食道を通るため、声帯には直接触れません。水・温かいお茶・炭酸・お酒・コーヒー・牛乳・ココアなど10種を、医師が理由を説明しているものと広く言われているだけのものに仕分け、飲むタイミングと量、持ち込みの注意、水を飲んでも声が枯れる人の見直し点まで解説します。

カラオケで飲むなら、基本は常温の水を、曲の合間にひと口ずつです。温かいお茶や白湯でもかまいません。
ただ、どの飲み物も食道へ流れていくので、声帯(声のもとになる2枚のひだ)に直接は触れません。飲み物で防げるのは、口や喉の乾燥までです。
そのため「何を飲んでも2〜3曲で声が枯れる」という人は、飲み物選びより声の出し方に原因があることが多くなります。歌い方のクセは歌っている本人には分かりにくいので、乾きによる枯れと歌い方による枯れの見分け方、クセを症状別に確かめる方法まで順にお伝えします。
喉にいい飲み物は声帯に届かない|飲み物がしている2つの仕事
飲み物が声帯を直接うるおすことはありません。ものを飲み込むとき、喉頭蓋(こうとうがい)というふたが気管側の入り口をふさぎ、飲み物は食道へ送られるからです。声帯があるのは、そのふたの奥です。
米国の大学病院の耳鼻咽喉科医と言語聴覚士による解説でも、口にしたものが声帯に直接触れるという考えは誤解だと説明されています。はちみつやお茶は喉を心地よくしてくれますが、声帯を洗い流しているわけではない、という内容です。
では飲む意味がないのかというと、そうではありません。飲み物の仕事は、体の水分を保つことと、口や喉の乾きをやわらげることの2つです。
- 体の水分を保つ:水を飲むと声の揺らぎなどの測定値が良くなり、水分を断つと悪くなったという研究のまとめがあります。
- 口や喉の乾きをやわらげる:ひと口飲み込むと口の中と喉の奥が湿り、咳払いをしたくなる感じが落ち着きやすくなります。
ただし、水分補給の効果は小さく、人によってばらつき、長続きしないとまとめた専門誌の総説もあります。水は声の土台であって、飲めば声が良くなるものではありません。
水分補給を含めた日ごろのケア全体は、喉を痛めない歌い方でまとめています。
カラオケの飲み物おすすめは常温の水|ドリンクバーは「水と好きな1杯」で頼む
カラオケで最初に頼む1杯は、常温の水がおすすめです。糖分もカフェインも炭酸も入っておらず、今回確認した公的機関や耳鼻咽喉科医の資料が、そろって水分補給の基本に挙げているからです。
ドリンクバーに水がなければ、白湯やカフェインの入っていない麦茶でも役割は同じです。温かいほうが落ち着く人は、温かいものを選んでください。
好きな飲み物を我慢する必要もありません。米国の公的機関は、カフェイン入りの飲み物やお酒を飲むなら、水もしっかり飲んでバランスを取るよう勧めています。大学病院の解説には、コーヒーを飲んだら同じ量の水を足すという目安もあります。
カラオケに置き換えると、好きな飲み物を1杯頼んだら、同じ量の水も横に置くという頼み方になります。
カラオケで喉に良い・悪いと言われる飲み物10種を「根拠の強さ」で仕分ける
飲み物の良し悪しには、医師や公的機関が理由を説明しているものと、経験則として広まっているだけのものが混ざっています。確認できた範囲で分けると、次のとおりです。
| 飲み物 | よく言われること | 根拠の強さ | カラオケでの扱い |
|---|---|---|---|
| 常温の水 | 喉をうるおす基本 | 公的機関と耳鼻咽喉科医が推奨。水を飲むと声の測定値が改善した研究もある | 最初の1杯。合間にひと口ずつ |
| 白湯・温かいお茶 | 喉が温まり声が出やすい | 喉が心地よくなることは医師も認める。声が良くなる根拠は確認できず | 好みで選ぶ。熱すぎない温度で |
| 冷たい飲み物 | 喉の筋肉が縮んで声が出にくい | 広く言われているだけ。はっきり裏づける研究は確認できず | 気になる人は氷なしで |
| 炭酸飲料 | げっぷが出る、喉への刺激になる | 専門医向けの資料が、胃酸を増やすものに挙げる。げっぷは経験則 | 歌う直前は少なめに |
| アルコール | 喉が乾く、声が荒れる | 医師と公的機関が理由を説明している | 飲むなら同じ量の水をはさむ |
| コーヒー・緑茶・紅茶 | 利尿作用で喉が乾く | 専門家は控えめを勧めるが、研究では声への悪影響は確認されていない | 飲んでよい。水の代わりにはしない |
| ウーロン茶 | 喉の油分を奪う | 広く言われているだけ。裏づける研究は確認できず | 乾く感じがあれば水に替える |
| 牛乳・乳製品 | 痰がからむ、膜が張る | 研究では分泌物の増加は確認されていない。口当たりの感覚はある | ねばつきが気になる人は歌う前を避ける |
| 柑橘ジュース | 喉を刺激する | 専門医向けの資料が、胃酸を増やすものに挙げる。喉への刺激は経験則 | 歌う直前は少なめに |
| ココア | 喉を守る、逆に痰がからむ | どちらも広く言われているだけ | 歌い終わってからが無難 |
コーヒーや緑茶のカフェインは、助言と研究結果がずれている
カフェインは「利尿作用があるので控えめに」と助言されることが多い成分です。日本の耳鼻咽喉科の専門医向けテキストも、カフェイン入りの飲み物は体の保湿につながるとは限らないとして、水を勧めています。
一方で、カフェインと声の関係を調べた研究を集めた総説では、カフェインで声の測定値が悪くなったという結果は1つもありませんでした。ただし対象になった研究は5件だけで、著者自身が証拠として頼りないと書いています。
コーヒーを1杯飲んだから歌えなくなる、と心配するほどの根拠はありません。水の代わりにはしない、という扱いで十分です。
牛乳で痰が増えるという説は、研究では裏づけられていない
乳製品を飲むと痰がからむ、という話は歌う人のあいだで有名ですが、検証した研究では支持されていません。風邪のウイルスに感染させた成人を10日間追った研究では、牛乳を飲む量と、鼻水の量や鼻づまりなどの症状に関連は見られませんでした。
飲んだあとに喉に膜が張ったように感じる人がいるのは事実です。ただ、口当たりの似た豆乳飲料でも同じ感覚が報告されていて、分泌物が増えたのではなく、飲み物の質感から来る感覚だと考えられています。
英国の病院の資料には、脂肪分の多い乳製品は粘液を濃くしやすいと書くものもあり、専門家の説明もそろってはいません。ねばつく感じが歌いにくさにつながる人だけ、歌う前を避ければ十分です。
冷たい飲み物とウーロン茶は、広く言われているだけ
冷たい飲み物は喉を縮ませる、ウーロン茶は喉の油分を奪う、という説明はボイストレーニング教室のコラムなどでよく見かけます。ただ、今回確認した医師や公的機関の資料に同じ説明はなく、はっきり裏づける研究も見つけられませんでした。
温度については、0度から70度まで水温を変えて声を測った2012年の韓国の報告があり、30〜40度の水を飲んだときに声帯の振動が安定したとされています。とはいえ確認できた報告はこの1本だけで、冷たい飲み物で歌いにくくなると言い切れる材料ではありません。
飲んで喉がこわばる、乾く感じがする人は避け、何も感じない人は気にしない。この2つは、その程度の個人差で決めてかまいません。
アルコールと炭酸は、専門家が理由を説明している
アルコールは、医師や公的機関が具体的な理由を挙げて注意を促している飲み物です。喉まわりを乾かしやすいこと、胃酸を増やすこと、飲みすぎると声帯がむくむことが、耳鼻咽喉科医の解説や病院の資料に挙がっています。
少量なら問題ないとする医師の解説もあるので、飲むこと自体を禁じる話ではありません。お酒1杯につき水1杯をはさむのが現実的な折り合いです。お酒のあとに声が出にくくなる場面はカラオケで声が出ない原因で整理しています。
炭酸飲料と柑橘類は、専門医向けテキストで「胃酸を増やすので取りすぎないもの」に入っています。げっぷで歌いにくいという声も多いので、歌う直前は量を控えるのが無難です。
カラオケでココアは喉にいい?歌う前より歌い終わってから
ココアが歌う前の喉に良いと言える根拠は、確認できませんでした。良いという説と避けたいという説の両方がありますが、どちらも裏づけは弱いものです。
良いとされる理由は2つあります。1つは油分が喉を覆って守るという説で、飲み物が声帯に触れない以上、声帯の保護としては成り立ちません。もう1つは、カカオの成分テオブロミンに咳を抑える働きがあるという話です。
こちらは実際に研究があり、初期の実験では咳が抑えられたと報告されています。ただし成分を薬として使った話で、咳が長引く289人を対象にした試験では、主な評価項目で偽薬との差は統計的に確かめられませんでした。どちらもココア1杯の効果を調べたものではありません。
避けたいとされる理由は、乳成分と砂糖で口の中がねばつくと言われることと、チョコレートが専門医向けテキストで胃酸を増やす側に入っていることです。ココアは歌う前の準備ではなく、歌い終わったあとの1杯に回すのが無難です。
カラオケ前と曲の合間の飲み物|飲むタイミングと量の目安
カラオケの直前にまとめて飲むより、朝から少しずつ飲んでおくほうが理にかなっています。飲んだ水は声帯に直接かかるのではなく、体全体の水分として回るからです。
量の目安として、耳鼻咽喉科医の資料では1日1.5リットルがよく紹介されています。起きている16時間で割ると、1時間あたり約100ミリリットル、コップ半分ほどです。2時間のカラオケなら、コップ1〜2杯をひと口ずつ分けて飲めば足りる計算になります。
これは単純に割っただけの目安です。汗をかく日は多めに飲み、持病で水分を制限されている人は主治医の指示を優先してください。
「飲んだ水が声帯に届くまで4時間かかる」といった数字を紹介する記事もありますが、出どころになる研究は確認できませんでした。時間を逆算するより、普段からこまめに飲むほうが確実です。
曲の合間は、次の3つを目安にしてください。
- 1曲歌い終えるごとに、水をひと口飲む
- 咳払いをしたくなったら、代わりにひと口飲み込む
- 人が歌っているあいだは、口を閉じて鼻で息をする
咳払いはくり返すと声帯の負担になるとされ、英国の病院の資料でも、代わりに水をひと口飲み込むことが勧められています。
鼻で息をするのにも理由があります。湿度の低い空気を口から15分吸い続けたところ、声を出し始めるのに必要な息の圧力が上がった、という実験報告があるからです。
歌うときは口から息を吸うので、エアコンの効いた部屋で3〜4曲続けて歌うと、これに近い状況になりえます。休んでいるあいだだけでも鼻で息をして、口の乾きを減らしておきましょう。
飲み物とは別に、歌い始める前に喉を慣らしておく手順は歌う前のウォーミングアップで紹介しています。
カラオケに飲み物を持ち込むときは、先に店のルールを確認する
飲み物の持ち込みは、認めている店と認めていない店があります。予約ページや店頭の案内で確認し、分からなければ受付で聞くのが確実です。
持ち込める店なら、常温の水のペットボトルを1本持っていけば足ります。持ち込めない店では、水やお湯、温かいお茶を最初に頼んでおきましょう。
水を飲んでもすぐ声が枯れる人は、飲み物より張り上げを確かめる
飲み物で防げるのは乾燥までで、歌い方による喉の負担は減らせません。すぐ枯れる人の原因は、カラオケで声が枯れる原因で整理しているとおり、喉に力を込めて声を押し出す歌い方にあることが多いからです。
自分の枯れ方がどちら寄りかは、次の手がかりで見当をつけられます。あくまで目安として使ってください。
乾きが主因と考えられるとき
- 口の中がねばつく、喉の奥が張りつく感じがある
- 低い曲でも、長く歌うほど少しずつかすれてくる
- 水をひと口飲むと、いったん楽になる
張り上げが主因と考えられるとき
- 高いサビを歌った直後に、急にかすれる
- 低い曲だけなら、何曲歌っても平気
- 水を飲んでも変わらず、首すじやあごに力が入っている
水を飲んでも変わらず、高いサビの直後に枯れるなら、見直すのは飲み物ではなく声の出し方です。
張り上げは、高い音を喉のまわりの力で押し上げてしまうクセのことです。力で押すのをやめて息を流す感覚に置き換える練習は、高音で喉が締まる・張り上げる原因と脱力の練習で手順を追えます。
厄介なのは、張り上げている本人ほど、いつもどおり歌っているだけだと感じやすいことです。グラスの水が減っていないことには気づけても、サビのたびに首に力が入っていることには、なかなか気づけません。
ボイとれ!は、録音した声を張り上げ・裏返り・息っぽさといった症状別に診断するアプリです。張り上げタイプと出た場合は、「張り上げをやめる」というレッスンから順に取り組む流れになっています。
自分がどのタイプに近いかは、声のクセを4タイプで見分けるセルフ診断でも確かめられます。
次のカラオケでは、水を1杯テーブルに置くことと、いちばん高いサビで首に力が入っていないかを1曲だけ確かめること。この2つから試してみてください。喉の痛みや声枯れが何日も続くときは、無理に歌わず耳鼻咽喉科で相談してください。
この記事で確かめた資料
- 米国国立聴覚・伝達障害研究所(NIDCD)「Taking Care of Your Voice」:水分補給、カフェインやアルコールと水のバランス
- UT Southwestern Medical Center「Voice care: Sorting fact from fiction」:飲食物は声帯に直接触れないという説明、コーヒーと同量の水
- MSDマニュアル家庭版「のど」:飲み込むときの喉頭蓋の働き
- 平野滋「専門医を悩ませる高齢疾患への対応 ―声帯萎縮症―」日本耳鼻咽喉科学会会報 123巻6号(2020年):1日1.5リットルの飲水、カフェイン・アルコール、胃酸を増やす飲食物の一覧
- 長崎市医師会 健康コラム「若々しい声を保つ」(2022年):飲水量の目安、咳払い
- 徳島県医師会「声帯炎」(2014年):コーヒーと飲酒
- Dorset County Hospital(英国NHS)「Taking care of your voice」:咳払いの代わりに水、アルコール、乳製品
- Sivasankar M, Leydon C「The role of hydration in vocal fold physiology」(2010年):水分補給の効果の限界、口呼吸の実験
- Alves M ほか「The Effect of Hydration on Voice Quality in Adults: A Systematic Review」(2019年):水分と声の測定値
- Georgalas VL ほか「The Effects of Caffeine on Voice: A Systematic Review」:カフェインと声
- Pinnock CB ほか「Relationship between milk intake and mucus production in adult volunteers challenged with rhinovirus-2」(1990年)、Wüthrich B ほか「Milk consumption does not lead to mucus production or occurrence of asthma」(2005年):牛乳と分泌物
- Usmani OS ほか「Theobromine inhibits sensory nerve activation and cough」(2005年)、Morice AH ほか「Theobromine for the treatment of persistent cough」(2017年):テオブロミンと咳の研究
- Kim B, Cho D「Correlation Analysis Between Vocal Fold Vibration and Voice Signal Analysis Parameter by Water Temperature」(2012年):水温と声の測定



