カラオケのレパートリーを増やす方法|1曲を「持ち歌」に仕上げる5つの手順
カラオケのレパートリーが増えないのは、覚えた曲数が足りないからではなく、1曲を「最後まで崩れない状態」に仕上げきっていないから。キーの決め方、難所の特定と反復回数、完成の目安までを手順化し、自分の声のクセに合う曲の選び方まで解説します。

持ち歌が増えないのは、覚えた曲数が足りないからではありません。1曲を「最後まで崩れない状態」に仕上げきっていないからです。なんとなく歌える曲を10曲持っていても、人前ではどれも出せません。逆に、難所を潰してキーを決めた曲が3曲あれば、それは立派な持ち歌です。
この記事では、「なんとなく歌える曲」を「持ち歌」に変える手順を、回数と期間の目安つきで解説します。
「なんとなく歌える曲」と「持ち歌」は別物
まず、この2つを分けて考えてください。
| なんとなく歌える曲 | 持ち歌 | |
|---|---|---|
| キー | 原曲のまま。高くて苦しいが我慢して歌う | 自分の声に合うキーが決まっている |
| サビの高音 | 出たり出なかったりする | 毎回同じように出せる |
| 息継ぎ | その場の勢いでなんとかする | どこで吸うか決まっている |
| 人前 | 「今日は調子が悪くて」と言い訳したくなる | 崩れない |
持ち歌とは、人前で自信を持って歌える曲のことです。言い換えれば、難所を潰し、キーを決め、最後まで崩れない状態にした曲。この定義に立つと、「レパートリーが少ない」という悩みの正体が見えてきます。
多くの人は、持ち歌を増やそうとして「新しい曲を覚える」方向に走ります。ところが、どの曲も7割の完成度で止まったまま次の曲に移るので、いつまでたっても人前で出せる曲が1曲も増えない。曲数を増やしているのに、持ち歌がゼロのままなのは、この構造が原因です。
やるべきことは逆です。今いちばん歌いたい1曲を、崩れないところまで仕上げきる。その手順を体で覚えてしまえば、2曲目からは同じ工程を繰り返すだけなので、レパートリーは自然に増えていきます。
1曲を持ち歌にする5つの手順
以下を順番にやります。1曲あたり2〜4週間が目安です。ここを飛ばして「とりあえず何度も通して歌う」だけだと、間違ったまま定着するので注意してください。
手順1|原曲を10回以上聴き込む(3〜5日)
まず歌わずに聴くだけの期間を作ります。メロディをうろ覚えのまま歌い始めると、間違った音程やリズムがそのまま体に染み込みます。
聴くときは、次の3点だけを意識してください。
- サビの最高音がどこか(一番苦しくなりそうな箇所を先に把握する)
- 息継ぎがどこに入っているか(原曲の歌手はどこで吸っているか)
- どこでテンポが詰まるか(言葉数が多くて早口になる箇所)
通勤・通学中に流すだけでも構いません。10回聴いても口ずさめない箇所があるなら、そこが最初の難所です。
手順2|自分のキーを決める(1日)
原曲キーにこだわらないでください。プロの歌手は自分の声域に合わせて曲を作っているので、原曲キーがあなたに合っている理由は何もありません。
キーの決め方はシンプルです。
- 原曲キーで1回通して歌う
- サビの最高音で喉が締まる・声が裏返る・苦しくて顔が赤くなるなら、キーを1つ下げる
- サビをラクに出せるところまで下げる(男性なら−2〜−4、女性なら−1〜−3に落ち着くことが多い)
- 下げすぎると今度はAメロの低音が出なくなるので、低音がスカスカになったら1つ戻す
サビの高音とAメロの低音、両方が無理なく出るキーがあなたのキーです。一度決めたら毎回そのキーで歌う。ここがブレると、いつまでも仕上がりません。
自分に合うキーが見つからない場合は、そもそも曲の音域が広すぎる可能性があります。カラオケで歌いやすい曲の選び方で、音域の幅が狭い曲の見分け方を確認してみてください。
手順3|難所を3つに絞って特定する(1日)
キーを決めたら、そのキーで1回録音して聴き返します。崩れる箇所は、たいてい3つ以内に収まります。よくある難所は次の3タイプです。
- サビの高音:喉が締まる、裏返る、声が細くなる
- 早口の箇所:言葉が追いつかず、音程が曖昧になる
- 息が続かない箇所:フレーズの終わりで声が細くなる、次の入りが遅れる
「なんとなく全体的に下手」で終わらせないこと。録音を聴いて「Aメロ2行目の高いところ」「2番サビ前の早口」のように、小節レベルで場所を特定します。ここが曖昧だと、次の手順で練習する場所が定まりません。
手順4|難所だけを1日20〜30回、1〜2週間反復する(最重要)
ここが持ち歌づくりの本体です。通して歌う練習ではなく、特定した難所だけを切り出して繰り返します。
- 難所の1フレーズだけを1日20〜30回。1回あたり数秒なので、5〜10分で終わります
- できなかった原因ごとに練習を変える:
- 高音で喉が締まる → 力を抜いて出す練習に切り替える(高音で喉が締まる・張り上げてしまう人へ)
- 高音で裏返る → 地声と裏声のつなぎ目の練習をする
- 息が続かない → 息継ぎの位置を歌詞に書き込んで固定する
- 10回連続で同じように出せたら、その難所はクリアとみなす
NG例:うまくいかないフレーズを、通し歌唱の中で何度も踏むだけ。これでは1日に数回しか難所を練習できず、しかも失敗のまま通り過ぎるので、間違いが定着します。難所は単体で切り出して回数を稼ぐのが鉄則です。
一人カラオケなら周りを気にせず同じフレーズを何十回も繰り返せます。具体的な使い方は一人カラオケでの練習方法を参考にしてください。
手順5|通して録音し、3回連続で崩れなければ持ち歌(1週間)
難所がクリアできたら、通しで歌って録音します。難所を単体でクリアできても、通しで歌うと崩れることがよくあります。前のフレーズで息を使いすぎて、サビで足りなくなるからです。
- 通して録音 → 聴き返す → 崩れた箇所を手順3に戻して特定 → 手順4で反復
- これを繰り返し、3回連続で崩れずに歌えたら持ち歌として完成とみなす
「3回連続」を基準にするのは、1回たまたま上手くいっただけでは、人前では再現できないからです。緊張すれば普段のクセは増幅されます。3回連続で安定して初めて、本番でも崩れない見込みが立ちます。
自分の声のタイプに合う曲を選べば、仕上がりが早い
同じ手順を踏んでも、曲の選び方で仕上がりまでの時間は倍以上変わります。理由は単純で、自分の声のクセと相性の悪い曲を選ぶと、難所が3つどころではなくなるからです。
例えば——
- 高音で張り上げてしまうクセがある人が、サビで高音が連発される曲を選ぶ → 曲のほぼ全域が難所になる。練習するほど喉が消耗し、仕上がる前に嫌になる
- 高音で裏返ってしまうクセがある人が、地声と裏声を何度も行き来する曲を選ぶ → 切り替えのたびに崩れるので、難所が10箇所以上になる
- 息っぽくて声に芯がない人が、ロングトーンで声を張る曲を選ぶ → 支えきれずに声が細くなり、聴かせどころで失速する
自分のクセを避ける曲から始めれば、難所は自然に減ります。張り上げグセがある人なら、まずサビの最高音が控えめでキーを下げられる曲。裏返りやすい人なら、地声と裏声の往復が少ない曲。息っぽい人なら、フレーズが短くて息継ぎの余裕がある曲。
これは「逃げ」ではありません。まず1曲を仕上げきる成功体験を作ることが、レパートリーを増やす最短ルートだからです。難しい曲は、持ち歌が3曲できてから挑めば十分間に合います。
男女それぞれの具体的な曲と音域データは、男性が歌いやすい曲・カラオケで女性が歌いやすい曲にまとめています。
持ち歌は何曲あればいいのか
「レパートリーは平均何曲なのか」が気になる方も多いはずです。第一興商(DAMの運営会社)が2024年1月に全国5,400人を対象に行った調査では、カラオケで歌える曲(持ち歌)の数は10代で「3曲以下」が4割超、「0曲」も1割超という結果でした。一方で**40〜60代では約3割が「11曲以上」**と答えています。
つまり、持ち歌が少ないのはあなただけではありません。若い世代ほど流行曲を歌う傾向があり、持ち歌が育ちにくいという構造もあります。
目安として考えるなら、以下で困る場面はほぼなくなります。
- 鉄板の1曲:最も仕上がっていて、緊張していても崩れない曲。迷ったらこれを出す
- 場のテンションに合わせる2〜3曲:盛り上げたいとき/しっとり歌いたいときの使い分け
- 世代を選ばない1〜2曲:年齢層が上の人がいる場でも通じる曲
合計で3〜5曲あれば、たいていの場面は乗り切れます。大事なのは合計曲数ではなく、そのうち何曲が「崩れない状態」まで仕上がっているかです。20曲を7割の完成度で持っているより、5曲を完璧に持っている人のほうが「歌が上手い人」と見られます。
数字を追いかけるのをやめて、まず1曲を仕上げきってください。
自分に合う曲は、自分の声のクセを知らないと選べない
ここまでの話には、前提がひとつあります。「自分の声のクセに合う曲を選ぶ」には、自分のクセが何なのかを知っていなければならない、ということです。
ところが、これが難しい。自分の声は、骨を伝わって聞こえるぶん、他人が聞いている声とは違って聞こえます。だから「高音で張り上げている」「サビで裏返りかけている」「声に芯がなくて埋もれている」といったクセに、歌っている本人はまず気づけません。難所を特定するために録音を勧めたのも、この理由からです。
そして、クセが分からないと——
- どの曲が自分にとって「難所だらけの曲」なのかが判断できない
- 難所を反復するときに、何を直す練習をすればいいのかが決まらない(高音で崩れる原因が「張り上げ」なのか「裏返り」なのかで、やるべき練習は正反対です)
逆に言えば、自分のクセが1つ分かるだけで、選曲も練習も一気に具体的になります。まずはあなたの声のクセはどのタイプ?4つの症状と直し方で、自分がどのタイプに当てはまるかを確かめてみてください。張り上げ・裏返り・息っぽい・つながった声の4タイプのうち、どれに近いかが分かれば、次に選ぶ1曲も、その曲の難所で何を練習すべきかも見えてきます。
持ち歌を増やす作業は、曲を覚える作業ではありません。自分の声を知り、1曲を仕上げきる工程を、繰り返し回すことです。1曲目が終われば、2曲目はもっと速く仕上がります。



