歌唱テクニック

なとりの歌い方の特徴|低音のフラットな質感と息を混ぜたファルセットのしくみ

なとりの歌い方は、低音域を土台に抑揚を削ったフラットな質感と、息を多めに混ぜたファルセットが特徴。「Overdose」と「絶対零度」で変わる声の役割を発声用語で分解します。

ボイとれ!編集部ボイとれ!編集部
なとりの歌い方の特徴|低音のフラットな質感と息を混ぜたファルセットのしくみ

なとりの歌い方の特徴は、低い音域を土台にして抑揚をあえて削り、息を多めに混ぜた質感で「歌う」より「語る」に近い距離感を作ることにあります。そのうえで曲によって声の使い方を切り替えており、「Overdose」ではフラットに空気をつくる声、「絶対零度」では中高音で語尾を切って刻む声、と役割が変わっていると分析されています。ここでは、その特徴を発声の用語に分解して整理します。

特徴①:低音域を土台にした「フラットな」歌い方

なとりの歌い方でまず耳につくのは、低い音域を中心に置き、抑揚を大きくつけないフラットな質感です。音楽メディアの歌声分析でも、「Overdose」(2022年)については低音域を基軸に抑揚を削ぎ落とした質感を持ち、楽曲の空気そのものを作る役割を担っていたと分析されています。

音域の面でも、複数のカラオケ音域サイトの解説では「Overdose」の地声は最低音D2〜mid1B(B2)付近から始まり、地声の最高音はmid2B(B3)前後と、全体の重心がかなり低い位置に置かれています。J-POPの男性ボーカルとしては高音の張り上げどころが少なく、低〜中音域だけで曲がほぼ成立している構成です。

ここで誤解しやすいのが、「低い音域なら楽に歌える」という思い込みです。低音は音が高いときのように喉が締まって悲鳴を上げることが少ないぶん、力を抜きすぎると声が息だけになって輪郭が消えます。低音で声がスカスカになる人は、自分の声が一番響く音域から外れて歌っていることが多いので、声が低い人の歌い方|自分が最も響く音域の見つけ方で自分のスイートスポットを確かめておくと、フラットに歌っても声が痩せなくなります。

練習の目安:ふだんの話し声と同じ高さで、母音「あー」を5秒×10回。音量を上げずに、声の輪郭(芯)だけが最後まで残るかを確認します。息だけになって輪郭が消えたら、それが「抜きすぎ」の境界です。

NG例:低い音を出そうとして顎を引き、喉を押し下げて太い声を作りにいくこと。これは低音が響いているのではなく喉で押しているだけで、フレーズの後半で声が詰まります。

特徴②:息を混ぜた質感と、ファルセットの使い方

なとりの声の「軽さ」を作っているのは、息を多めに混ぜる発声です。カラオケ向けの歌い方解説では、「Overdose」で使われる裏声は息を漏らしながら発声するファルセットであること、また普段の歌声より息を多めに交ぜたウィスパーボイス寄りの質感が切ない表現に用いられていることが指摘されています。

息を混ぜた声は「力を抜けば出る」と思われがちですが、実際には逆で、息の量を増やしながら声の芯を保つバランスが技術の本体です。息だけを増やすと音程が不安定になり、かすれて音が当たらなくなります。この芯と息の配分についてはウィスパーボイスとは?出し方のコツ|息だけ漏らす声との決定的な違いで手順から解説しています。

裏声そのものが不安定な人は、その前段階で止まっています。息を混ぜたファルセットは「安定した裏声が出せること」が前提なので、地声から裏声で裏返るのはなぜ?換声点の段差をなくす練習で、まず段差のないつなぎ目を作るほうが近道です。

練習の目安:無理のない中音域で、①息だけを8秒吐く→②その息の流れに声をそっと乗せる、を1セットとして5セット。声を乗せた瞬間に音量が跳ね上がったら、息の流れが途切れて声帯を強く閉じにいった合図です。

NG例:息っぽさを出そうとして、ささやき声のまま曲を最後まで通すこと。声帯がほとんど閉じない状態で歌い続けると、喉の乾燥と疲労が早く来ます。

特徴③:リズムを牽引する語尾の処理

なとりの歌い方は、曲によって声の役割そのものが変わります。歌声分析では、「絶対零度」(2024年・TVアニメ『WIND BREAKER』オープニングテーマ)については中高音域を中心に刻まれる歌唱で、語尾を曖昧にせずフレーズの終点を残すことで歌声がリズムを牽引していると分析されています。さらに「プロポーズ」(2025年)では、言葉を溶かすそれまでのアプローチから、声の芯を残す母音処理へ転換したとも指摘されています。

つまり「息っぽくてフラット」は、なとりの声のすべてではなく、曲ごとに選ばれている一つの状態です。同じ人が、語尾を溶かす歌い方と、語尾を切って輪郭を残す歌い方を持ち分けている、という理解のほうが実態に近いといえます。

語尾の処理は、真似しやすいわりに歌の印象が大きく変わる部分です。フレーズの終わりを「フェードさせて消すのか」「はっきり切るのか」を先に決めてから歌うだけで、リズムの見え方が変わります。

練習の目安:好きな1フレーズを、①語尾を息で溶かす版、②語尾を短く切る版、の2通りで各5回ずつ録音して聴き比べます。3日ほど続けると、自分がどちらの癖に寄っているかがはっきりします。

NG例:全部の語尾を溶かすこと。リズムの速い曲でこれをやると、言葉が伴奏に埋もれてテンポが曖昧に聞こえます。

真似するときの注意点|喉を痛めないために

なとりの歌い方は、高音を張り上げる系統ではないぶん、無理な真似で一発で喉を壊すタイプの発声ではありません。ただし注意点が2つあります。

1つめは、低音を「作りにいく」ことです。 低く渋い声を出そうとして喉頭を押し下げると、喉に力が入った状態が固定されます。これは喉締めと呼ばれる状態で、続けると声の可動域そのものが狭くなります。歌うと喉に力が入る自覚がある人は、歌うと喉に力が入る人へ|喉締めの原因と力を抜く直し方で脱力の順番を確認してから練習してください。

2つめは、キーを原曲のまま押し通すことです。 「Overdose」は重心が低いぶん、女性や高めの声質の人が原曲キーで歌うと最低音が出ずに、低音側で声が消えます。逆に「絶対零度」はアップテンポで譜割りが細かく、息継ぎの余裕が少ない曲だと指摘されています。低音が出ないまま押し込むより、自分の音域に合わせてキーを動かすほうが、結果的に原曲の雰囲気に近づきます。

もう一点、身も蓋もない前提として——アーティストの声質そのものは真似できません。真似できるのは、息の混ぜ方・語尾の処理・リズムの置き方といった「操作できる技術」の部分だけです。そこだけを取り出して自分の声に移植する、と考えたほうが結果が出ます。

「Overdose」で低音とフラットな質感を聴く

Aメロで声の音量をほとんど動かさずに進むこと、そして裏声に切り替わる箇所で息の量がどう変わるかに注目して聴いてみてください。

憧れの歌い方に近づく前に、自分の声のクセを知る

好きなアーティストの歌い方を取り入れるときに一番よくある失敗は、自分の声のクセの上に憧れの歌い方を重ねてしまうことです。たとえば、もともと息が漏れて声が細いタイプの人が「息を混ぜる質感」を足すと、ただ聞こえにくい声になります。逆に、力んで張り上げる癖がある人が同じことをやると、脱力のきっかけになります。同じ真似でも、出発点によって結果が正反対になるということです。

だから順番としては、憧れの歌い方を足す前に、自分の声が今どういう状態なのかを確かめるほうが早道です。ボイトレアプリ『ボイとれ!』は、録音した声を「張り上げ・裏返り・息っぽい・つながった声」の4タイプに診断し、その弱点に合わせた練習メニューを組む仕組みになっています。機能や料金はボイとれ!徹底ガイド|使い方・料金・評判にまとめています。

そして最大の問題は、自分の声のクセは自分の耳では聞こえないことです。歌っている最中に聞こえているのは骨伝導を含んだ声で、外に出ている声とは別物だからです。まずは録音して客観的に聴くところからで構いません。あなたの声のクセはどのタイプ?4つの症状と直し方【セルフ診断】で、今の自分がどのタイプに当てはまるかを確かめてみてください。

#なとり 歌い方#Overdose#絶対零度#ウィスパーボイス#ファルセット#低音#脱力発声#歌唱テクニック

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