花の塔(さユり)の音域|最低音G3・地声最高音D5・裏声E5とキーの下げ方

さユりさんの「花の塔」は、最低音がmid1G(G3)、地声の最高音がhiD(D5)、裏声を使えばhiE(E5)まで届く曲です。TVアニメ「リコリス・リコイル」のエンディングテーマで、女性ボーカルとしてはかなり高い音域に設計されています。サビはhiA#〜hiC#あたりの高い音が続き、地声のD5が曲全体で9回ほど登場する、いわゆる「高音持久型」の曲です。
この記事の音域データは、複数の音域分析サイト(vocal-range.com・keytube.net など)を突き合わせ、一致した値だけを採用しています。なお「花の塔」というタイトルは他のアーティストの楽曲にも使われることがありますが、ここで扱うのはさユりさんが歌うリコリス・リコイルEDの「花の塔」です。
「花の塔」の音域データ|最低音G3・最高音D5
まず、原曲(さユりさんが歌うキー)の音域を整理します。日本式の音名と、カッコ内に国際式(オクターブ番号つき)を併記します。
| 区分 | 音名(日本式/国際式) | 主な登場箇所 |
|---|---|---|
| 最低音 | mid1G(G3) | Aメロなどの低い箇所 |
| 地声最高音 | hiD(D5) | サビの山(曲全体で約9回) |
| 裏声最高音 | hiE(E5) | サビで頻繁に使用 |
音域の幅は最低音G3から地声最高音D5まで、約1オクターブ半。J-POPの女性曲としては広めで、平均の音の高さも高めです。BPMは172前後とテンポが速く、テンポの速さも歌いにくさに関わってきます。
さらにこの曲は転調があります。1番のBメロ〜サビとラストサビは転調していますが、2番のサビは転調しておらず、他のサビより半音ほど低くなっています。「1番は歌えたのに2番で調子が狂う」「ラスサビで急にキツくなる」と感じるのは、この構造の違いが理由の一つです。
なぜ「花の塔」は歌いにくいのか
一言でいうと、「高い音が短時間ではなく、長く続く」ことが最大の難しさです。難所を分解すると次のようになります。
- サビがhiA#〜hiC#の高い音でほぼ埋め尽くされていて、休める低い音がほとんどない
- 地声最高音のD5が曲を通して9回ほど出てくる(一発ではなく、繰り返し要求される)
- 裏声のE5がサビで頻繁に登場し、地声と裏声の切り替えが多い
- BPM172と速いため、高音を出しながら言葉を素早く回す必要がある
- 転調のせいでサビごとに高さが変わり、耳が音程を見失いやすい
つまり「一瞬だけ高い音を当てる」タイプの曲ではなく、「高い音域に居座り続ける体力」と「地声と裏声を素早く行き来する技術」の両方が問われる曲です。1回だけならD5が出せても、サビを最後まで同じ強さで保てるかが本当の関門になります。
自分の今の音域がどこまで届くかがあいまいなままだと、この曲のどこで詰まるのかも判断できません。まずは自分の最高音・最低音を正しく測っておくと、原曲キーで挑めるか、キーを下げるべきかの判断がしやすくなります。音域の測り方は音域を広げる方法・音域の調べ方で詳しく解説しています。
原曲キーで歌える条件は「D5をサビの間ずっと保てるか」
原曲キーで「花の塔」を気持ちよく歌えるかどうかは、**「地声のhiD(D5)を、サビの終わりまで力尽きずに繰り返し出せるか」**の一点に絞られます。1回だけD5が当たるかではなく、サビ全体でその高さに居座り続けられるかが基準です。
- 女性の場合:地声最高音D5が原キーのまま出せる方は原曲キーで狙えます。ただしD5は多くの女性にとってもかなり高い音なので、「1回は出せるがサビの後半で潰れる」なら、次の「キーを下げる目安」を検討してください。裏声のE5も含めて、地声と裏声の切り替えがなめらかにできるかも条件になります。
- 男性の場合:原曲キーのD5は男性の地声ではほとんど届きません。この曲を男性が歌うときは、キーを大きく下げるか、後述する「オク下(1オクターブ下げる)」で歌うのが現実的です。
「サビの後半で急に声が細くなる」「高音でだけ喉が締まる」という方は、原曲キーに挑む前に高音の出し方そのものを整えると近道です。喉を締めて張り上げるクセがあると、D5を9回も繰り返す前に喉が持ちません。高い声を出すコツや張り上げ・喉が締まるのを改善する方法を先に読んでおくと、原曲キーに近づけます。
キーを下げる目安
原曲キーで最後まで保てないと感じたら、無理をせずキーを下げましょう。目安は次のとおりです。
- 女性:サビの後半でD5が潰れるなら、まず**−2〜−3**を試してください。−2でサビ最高音がC5前後、−3でB4前後まで下がり、地声で押し切れる範囲に近づきます。
- 男性:原曲キーは届かないので、−4〜−6、あるいは思い切って**オク下(−12=1オクターブ下)**で歌うのが現実的です。オク下にすると最低音が下がりすぎて低音がスカスカになる場合があるので、その手前の−4〜−6で「地声で無理なく出せる高さ」を探るのがおすすめです。
ただしキーを下げすぎると別の問題が出ます。この曲は低音側のG3もそれなりに使うため、下げすぎると今度は低音が出しにくくなり、声が痩せて聞こえます。「高音がラクになったが、低音がボソボソする」と感じたら下げすぎのサインです。キーを下げること自体は上達の妨げではありませんが、下げすぎの弊害と適切な下げ幅の考え方はカラオケでキーを下げるのはダサい?で詳しくまとめています。
難所は3つ
「花の塔」でつまずきやすいポイントを、3つに分けて対処法を紹介します。
難所1:サビで高音を保ち続けるスタミナ
サビはhiA#〜hiC#が連続し、その山でD5が繰り返し要求されます。一発は出せても、サビを最後まで同じ強さで保てないのがこの曲の核心です。息を使いすぎるとサビの後半で失速するので、フレーズごとに息を計画的に配分することが大切です。どこで息を吸うかを決めておくだけで、後半の安定感が変わります。息継ぎの設計は歌の息継ぎのコツを参考にしてください。
難所2:地声と裏声の切り替え
地声のD5と裏声のE5がサビの中で近い高さで行き来するため、切り替えの段差が目立ちやすい曲です。地声から裏声に移る瞬間に「スカッ」と抜けたり、逆に裏声から地声に戻すときに引っかかったりします。この換声点をなめらかにする練習は声が裏返る・換声点をなめらかにする方法にまとめています。まずは自分の裏返るポイント(多くの場合、女性はE5前後)を把握しておくと対処しやすくなります。
難所3:速いテンポでの言葉回し
BPM172と速いため、高音を出しながら歌詞を素早く回す必要があります。音程に気を取られると言葉が置き去りになり、逆に言葉を追うと音程が甘くなります。まずはテンポを落として音程を体に入れ、少しずつ原曲の速さに近づけるのが確実です。裏声そのものの安定に不安がある方はきれいな裏声の出し方で土台を作ってから挑むと、速いサビでも裏声が崩れにくくなります。
音域が近い曲で段階を踏む
いきなり「花の塔」に挑むのがきつい場合は、地声最高音や裏声の使い方が近い曲で段階を踏むと、体が高音域に慣れていきます。当メディアで音域を解説している女性曲のなかから、「花の塔」に近いものを挙げます。
- 炎(LiSA)の音域:地声最高音・裏声最高音ともに「花の塔」とほぼ同じ高さ(E5帯)。同じく高音を保つスタミナが問われる曲なので、直前の練習曲として近い感覚がつかめます。
- First Love(宇多田ヒカル)の音域:地声最高音がD5で「花の塔」と一致。ただしテンポはゆっくりなバラードなので、まず「D5を落ち着いて出す」感覚を作るのに向いています。速いサビに移る前の足がかりに。
テンポの速い「花の塔」にいきなり挑むより、まずゆっくりしたFirst LoveでD5に慣れ、次に炎で高音を保つスタミナを養い、それから原曲、という順番だと無理なく近づけます。
「原曲キーでいけるか」は録音しないと分からない
ここまで音域の数値と条件を整理してきましたが、「自分が原曲キーで最後まで歌えているか」は、歌っている本人には正しく判断できません。歌っている最中の自分の声は、骨伝導(頭の骨を通して聞こえる音)が混ざるため、実際よりも上手く、安定して聞こえてしまいます。サビの後半でD5が潰れていても、本人は気づけないことがよくあります。
だからこそ、一度スマホでいいので録音して、あとから聴き返してみてください。「サビの後半で音程が下がっていないか」「地声から裏声への切り替えでスカッと抜けていないか」「高音で喉を締めて張り上げていないか」——録音を聴くと、自分では気づけなかったクセがはっきり見えてきます。
そのうえで、自分の声がどのタイプのクセ(症状)を持っているのかを見極めると、「花の塔」のどこを直せば原曲キーに近づけるのかが具体的に分かります。声のクセは大きく4つのタイプに分かれます。自分がどのタイプかを知りたい方は声のクセを診断する4タイプを試してみてください。自分の症状に合った練習から始めれば、「花の塔」のサビも一歩ずつ手が届くようになります。
アプリ「ボイとれ!」なら、録音した自分の声を症状別に診断し、そのクセに効く練習まで案内します。まずは自分の声がどのタイプかを知るところから始めてみてください。



