Eveの歌い方の特徴|ファルセットとミックスボイスの切り替え・早口フレーズのしくみ
Eveの歌い方の特徴は、息に乗せた軽い地声・芯を足した中高音(ミックスボイス寄りの声)・息を多めに含んだファルセットを、言葉数の多い速いフレーズの中で一瞬ずつ切り替える点にあります。「ドラマツルギー」で地声と裏声の最高音が全音しか違わないこと、「廻廻奇譚」で裏声に触れてすぐ地声へ戻る切り返し、早口でも言葉が崩れないリズムの取り方を、フレーズ単位で解説。「歌い方は変わった?」という疑問には、2017年のMVと2021年のLive Film ver.という同じ曲の公式映像と、音域データの比較で答えます。高音を張り上げずに真似するための3つの手順つき。

Eveの歌い方の特徴は、息に乗せた軽い地声、芯を足した中高音(ミックスボイス寄りの声)、息を多めに含んだ裏声(ファルセット)の3つを、言葉数の多い速いフレーズの中で一瞬ずつ切り替えていく点にあります。
高い音を力で押し上げるのではなく、「どの音で裏声に渡すか」を決めて軽く渡している歌い方、と捉えると真似する方向が定まります。
ただ、この切り替えがうまくいっているかどうかは、歌っている本人の耳では判断しにくい部分です。録音を聴き返しても「なんとなく違う」で止まりやすいので、この記事ではまず「どこで何が切り替わっているか」をフレーズ単位で言葉にし、最後に自分の声のクセを症状別に見極める方法へつなげます。
Eveの声は「軽い地声・芯のある中高音・息の多い裏声」の3層でできている
Eveの歌声は、音の高さによって出し方を3段階に使い分けていると分析されています。声質そのものは音楽メディアでも「中性的で柔らかい」と紹介されており、そこに軽やかな中高音と、地声から裏声への自然なつながりが重なっているのが持ち味です。
| 高さの帯 | 出し方(ボーカル分析で言われていること) | 真似したときに起きやすいこと |
|---|---|---|
| 低〜中音 | 息の流れに乗せて、声帯を軽く鳴らす地声 | 太く作ろうとして喉が固まり、次の高音で詰まる |
| 中高音 | 息の圧を少し足して芯を出す、ミックスボイス寄りの声 | 地声のまま押し上げて張り上げになる |
| 高音 | 息を多めに含んだ、抜けるような裏声(ファルセット) | 切り替えが遅れて裏返る/息だけになって音が消える |
ミックスボイスは地声の芯を残したまま高い音を出す発声、ファルセットは息が混ざった柔らかい裏声のことです。どこからがどちらかを一次資料で線引きできるわけではないので、表は「そう解説されている」という整理として読んでください。
数字でも傾向は見えます。Eveの22曲を調べた音域集計では、地声の最高音がA4(hiA)以上の曲が20曲、裏声を使っている曲が17曲とされています。高音を全部地声で押し切るタイプでも、全部裏声に逃がすタイプでもない、ということです。
この「中高音の芯」を作る手順はミックスボイスの出し方で、息の多い裏声の出し方と、かすれてしまうときの原因はファルセットの出し方で扱っています。
同じように声区(地声・裏声といった声の種類)の切り替えを軸にした歌い方としては、星街すいせいの歌い方も聴き比べの材料になります。
早口でも言葉が崩れないのは、出だしの速さと「1拍を4つに割る」リズムの取り方
Eveの早口フレーズが聴き取りやすいのは、音の出だし(アタック)がきれいで速く、一音ごとの音程がはっきりしているからだと解説されています。音楽メディアでも、細かな譜割り(メロディへの言葉の割り当て)の中で言葉を次々と繰り出す歌唱が特徴として挙げられています。
背景として確認できる経歴は次のとおりです。2009年に動画投稿サイトで「歌い手」として活動を始め、ボカロ曲のカバーを中心にした自主制作アルバムを発表。2016年の全国流通盤から自作曲が中心になり、2017年のアルバム『文化』は全曲が自作、2019年にアルバム『おとぎ』でメジャーデビューしています。
歌い方との因果までは断定できませんが、言葉数の多い曲を長く歌ってきた人であることは押さえておきたい背景です。
速いフレーズで言葉が転ぶ人は、次の2つを別々に確認すると原因が切り分けられます。
- 子音が長い:語頭の子音に時間を使うと、母音(音程が乗る部分)が拍に間に合いません。子音は短く当て、母音で音程を取ります。
- 拍の数え方が粗い:1拍をひとかたまりで感じていると、その中に入る言葉の位置が毎回ずれます。1拍を頭の中で4等分して感じておくと、遅れや走りに気づけます。
たとえば「廻廻奇譚」はテンポがBPM185前後とされています。1拍はおよそ0.32秒で、これを4つに割ると1つ分は約0.08秒です。この細かさを原曲の速さでいきなり合わせるのは難しいので、練習は原曲の6〜7割(BPM110〜130あたり)から始め、言葉が全部はまってから5ずつ上げていくのが現実的です。
また、Eveはビブラート(音を細かく揺らす技法)をあまりかけず、まっすぐな音程で歌うことが多いとも分析されています。速い曲では、まっすぐ当てる精度がそのまま上手さに聴こえます。
歌ってみたで原曲との精度を上げたい人は歌ってみたで上手いと言われる歌い方、拍の感じ方から鍛え直したい人はリズム感を鍛える方法が次の一歩になります。
「ドラマツルギー」で地声の天井と裏声の天井の近さを耳で確かめる
サビの中で、地声の高音と裏声の高音がそれぞれどこに出てくるかを探しながら聴いてみてください。
「ドラマツルギー」は2017年に発表され、同年のアルバム『文化』に収録された曲です。複数の音域分析で、地声の最低音がG#2(lowG#)、地声の最高音がB4(hiB)、裏声の最高音がC#5(hiC#)とされています。
注目したいのは、地声で出している一番高い音と、裏声で出している一番高い音が、全音(半音2つ分)しか違わないことです。
音域分析サイトによれば、このB4とC#5はどちらも各サビに1回ずつ登場します。つまりサビの一番高い帯では、ほとんど同じ高さの音を地声でも裏声でも歌っていることになります。「ある高さを超えたら全部裏声」という単純な線引きでは再現できない曲です。
ここが真似する側の難所です。「届かなくなったら裏声にする」という歌い方だと、切り替えの位置が毎回ずれ、地声の最後の一音で張り上げ、次の裏声で息だけが漏れる、という崩れ方になりがちです。あらかじめ「この音は地声、次の音は裏声」と決めておき、地声側を軽めに作って裏声との音量差を小さくするのが、この曲に近づく方向です。
もう一つの特徴は低音です。最低音のG#2は2番のAメロとCメロに出てくるとされ、サビの高音とのあいだに2オクターブ以上の落差があります。低音で喉を下げて太く作ると、そのままサビに飛んだときに重さが残りやすいので、低いところは息を流して軽く置くほうが後がラクになります。
原曲キーで歌えるかどうかの判定や、キーをいくつ下げるかの目安は、ドラマツルギー(Eve)の音域にまとめています。
「廻廻奇譚」で裏声に触れてすぐ地声へ戻る一瞬を聴く
サビで裏声に上がったあと、間を置かずに地声へ戻ってくる切り返しの速さに注目してみてください。
「廻廻奇譚」は2020年、TVアニメ『呪術廻戦』第1クールのオープニングテーマとして発表された曲です。音域は地声の最低音がF2(lowF)、地声の最高音がA#4(hiA#)、裏声の最高音がD5(hiD)とされ、地声だけで約2オクターブ半、裏声の最高音まで含めると2オクターブ+9半音あります。最低音のF2はCメロに一瞬だけ、地声最高音のA#4はサビを中心に何度も出てきます。
この曲で聴き取りたいのは、裏声の「短さ」です。裏声はサビと2番のBメロに出てきますが、長く伸ばすのではなく、一瞬触れてすぐ地声に戻る使い方になっていると解説されています。
カラオケ解説では、裏声のあとほとんど間を置かずに地声へ切り替える曲だと説明されています。ボイストレーナーの解説でも、Bメロに裏声へ飛んで地声に戻ってくる箇所があり、戻った先がF4付近の音なので、そこで地声が重くなりすぎないことが求められる、と指摘されています。
この往復は、裏声と地声がそれぞれ単独でも安定して出せることが前提になります。裏声が弱いと、戻るときに地声が強く入りすぎて段差が目立ちます。往復を速くするには、勢いをつけるより先に、裏声だけ・地声だけを軽く出せるようにしておくほうが近道です。
往復で裏返ってしまう人は、換声点の段差をなくす練習が土台になります。
発音にも工夫があると言われています。歌詞の表記どおりに一音ずつはっきり発音するのではなく、撥音(「ん」)をほとんど鳴らさずに流している箇所や、サビ頭の助詞を表記とは少し違う音で歌っている箇所がある、という指摘です。高い音で口の形を言葉どおりに大きく変えると喉が締まりやすいので、出しやすい音の形を優先して音程を守る、という考え方は速い高音フレーズで役に立ちます。
Eveの歌い方は変わった?2017年のMVと2021年のLive Film ver.で「ドラマツルギー」を聴き比べる
先ほどの2017年のMVと同じサビで、地声の高音の太さと、裏声に渡った瞬間の息の量がどう聴こえるかを比べてみてください。
結論から言うと、確認できた範囲では、発声の方法そのものが別のものに変わったと裏づけられる分析は見当たりません。変化として語られているのは「表現の幅」で、数字で確かめられるのは「曲が要求する音域の広がり」です。
表現の幅については、2019年1月に音楽メディアが掲載したアルバム『おとぎ』先行上映会のレポートに、もともとのリラックスした優しい歌声が、優しい曲では以前より温かみを増し、人の心を刺すような曲では刺々しさを帯びつつある、という趣旨の印象が記されています。声の種類が変わったというより、同じ声で出せる表情が増えた、という聴き方です。
音域については、2017年と2020年の代表曲を並べると違いがはっきりします。
| 項目 | ドラマツルギー(2017年) | 廻廻奇譚(2020年) | 差 |
|---|---|---|---|
| 地声の最低音 | G#2(lowG#) | F2(lowF) | 3半音低い |
| 地声の最高音 | B4(hiB) | A#4(hiA#) | 半音差(ほぼ同じ) |
| 裏声の最高音 | C#5(hiC#) | D5(hiD) | 半音差(ほぼ同じ) |
地声の天井はほぼ同じ高さのまま、低音側が3半音ほど下に広がっています。音名は聴き取りによる分析なので半音程度のずれはありえますが、「高くなった」のではなく「下にも広く使うようになった」という方向は読み取れます。落差が大きい曲ほど低音部とサビで声の印象が違って聴こえるので、「歌い方が変わった」と感じる理由の一部はここにありそうです。
もう一つ、同じ曲どうしで比べる方法があります。「ドラマツルギー」には、2017年公開のMV(スタジオ録音)のほかに、2021年7月に公開されたライブ形式の映像(Live Film ver.)が公式チャンネルにあります。別の曲どうしだと曲の作りの違いが混ざりますが、同じ曲なら歌い方の違いだけに耳を向けられます。聴くポイントは3つです。
- サビの地声の高音が、太く張って聴こえるか、軽く当てて聴こえるか
- 裏声に渡った瞬間に、息の音がどれくらい混ざるか
- 早口の部分で、語頭の子音がどれくらい立って聴こえるか
ただし、スタジオ録音とライブ形式の映像では録り方が違います。聴こえ方の差のすべてが歌い方の変化とは言い切れないので、優劣ではなく「同じ曲でも渡し方に幅がある」という見本として聴くのがおすすめです。
Eveの歌い方を真似するときの注意点|高音は張り上げず、裏声を先に育てる
Eveの歌い方に近づくときに一番避けたいのは、A#4〜B4あたりの高音を地声のまま力で押し上げることです。この高さがサビで何度も出てくる曲が多いので、張り上げで歌うと喉が先に疲れやすくなります。順番は「裏声を単独で出す→地声とつなぐ→テンポを落として言葉を乗せる」です。
手順1:裏声だけで、息を混ぜて軽く出す
「ホー」とため息を音にするつもりで、楽に出せる高さの裏声を5秒伸ばします。3回を1セットとして、1日2セット。音量は小さくてかまいません。息だけになって音が消える場合は、息の量を半分にして「フー」と細く出し直します。
手順2:オクターブで地声と裏声をつなぐ
唇を軽く閉じ気味にした「ブー」で、楽な低い音から1オクターブ上へ跳びます。下は地声、上は軽い裏声寄りで、上の音ほど音量を落とすのがコツです。1日3〜5回。上の音でアゴを突き出したり、音量を上げて押し込んだりするのは逆効果です。
手順3:テンポを落として、言葉を乗せる
歌いたいフレーズを原曲の6〜7割の速さで歌い、「ここは地声」「ここは裏声」と決めた位置どおりに渡せるかを確かめます。3回続けて同じ位置で渡せたら、テンポを5だけ上げます。原曲の速さで崩れたら、ひとつ前のテンポに戻します。
高音になるほど首や肩に力が入る人は、先に高音で喉が締まる・張り上げる原因で力を抜く練習から入ったほうが、手順2がうまくいきやすくなります。地声の高音そのものの出し方は高い声の出し方で扱っています。練習中に喉の痛みや違和感が続くときは、無理をせず、耳鼻咽喉科など専門医に相談してください。
自分の切り替えがうまくいっているかは、症状別に見極める
Eveの歌い方を真似してうまくいかないとき、原因は才能ではなく、切り替えのどこでつまずいているかの違いです。そして、つまずき方によってやるべき練習は変わります。
- 地声の高音で喉が締まり、苦しくなる(張り上げ)
- 裏声に渡る瞬間に声が抜ける・段差ができる(裏返り)
- 裏声が息ばかりで、音程や音量が保てない(息っぽい)
やっかいなのは、歌っている最中の自分の声が、頭の骨を伝わる音と混ざって実際より太く聴こえることです。「軽く渡したつもり」でも押していたり、「つながったつもり」でも段差が残っていたりします。録音して聴き返しても、3つのうちどれなのかを自分で言い当てるのは簡単ではありません。
まずは声のクセを4タイプで診断する方法で、自分がどのタイプに近いかを切り分けてみてください。
ボイとれ!では、録音した声をお手本と聴き比べて近いタイプを選んだうえで、裏返りタイプなら「地声と裏声をなじませる」「つなぎ目の段差を消す」、張り上げタイプなら「張り上げをやめる」といったレッスンに進む流れになっています。
教室に通うか、アプリで独学するかで迷っている人は、ボイトレはアプリと教室どっちがいいかの比較も参考になります。
Eveの歌い方の核は、高い声の強さではなく、渡す位置の正確さと速さです。自分の声がどこで引っかかっているかを先に知っておくと、同じ曲を練習するときに直すべき一点がはっきりします。



