裏声が出ない原因は5つの型で別物|かすれる・息しか出ない・カラオケでだけ出ないを30秒で切り分ける
裏声が出ない原因は1つではなく、「どう出ないか」で5つの型に分かれます。地声のまま切り替わらない、息しか出ない・かすれる、高い裏声か低い裏声だけ出ない、家では出るのにカラオケだと出ない、逆に裏声しか出ない。小さな「ホー」を2つの高さで出す30秒テストで自分の型を切り分け、型ごとに「いま起きていること」と「最初にやる1つ」、次に進む練習を案内します。男性や声変わりの時期に裏声が出にくい理由も整理しました。

裏声が出ない原因は1つではなく、「どう出ないか」で5つの型に分かれます。型によっては、最初にやることが正反対になります。
地声のまま切り替わらない、息しか出ない・かすれる、高い裏声か低い裏声だけ出ない、家では出るのにカラオケだと出ない、逆に裏声しか出ない。この5つは喉の中で起きていることが別々です。たとえば息しか出ない人が「もっと息を吐こう」と頑張ると、かえって音になりません。
やっかいなのは、出している本人には、どの型も「出ない」「かすれる」としか感じられないことです。声は、症状ごとに分けてから直すほうが早く進みます。この記事では練習法を並べる前に、30秒のテストで自分の型を切り分け、型ごとに「いま起きていること」と「最初にやる1つ」、その先の進み方を案内します。
小さな「ホー」を2つの高さで出すと、裏声が出ない原因が5つに分かれる
静かな場所で、ささやき声より少しだけ大きい音量の「ホー」を、3秒ずつ出してください。高さは、話し声よりはっきり高いところと、出せそうな一番高いところの2つです。
うまく出そうとする必要はありません。何が起きたかだけを観察して、下の表と照らし合わせます。
| 型 | 「ホー」で起きること | 最初にやる1つ |
|---|---|---|
| 型1 切り替わらない | 高くしようとすると地声のまま大きくなる。または喉が詰まって止まる | 低い音から登るのをやめ、高いところから下へ滑り降りる |
| 型2 息しか出ない・かすれる | 高さは変わるが、息の音ばかりで音にならない。途中で途切れる | 伸ばしたあとに息が余るか、尽きるかを確かめる |
| 型3 高さによって出ない | 高いほうだけ消える。または、曲の低めの箇所を裏声で歌うと消える | 高い側は進むほど音量を下げる。低い側は小さな地声に替える |
| 型4 カラオケでだけ出ない | いまは2つとも出た。曲の中やカラオケ店では出ない | 裏声のフレーズだけマイクを近づけ、声は家と同じ小ささにする |
| 型5 裏声しか出ない | 楽に出る。むしろ歌うと全部この声になる | 歌詞を話し声で読んでから、1音だけ伸ばす |
2つ以上当てはまる人は、表の上にある型から片づけます。裏声に切り替わっていない状態で息の量を調整しても、調整する相手がまだいないからです。
なお、ここから先はすべて発声の使い方の話です。かすれや出にくさが数週間続いている、声を出すと痛みがある、ある日急に出なくなった、という場合は、練習で何とかしようとせず、無理をしないで耳鼻咽喉科に相談してください。
型1:裏声に切り替わらず、地声のまま大きくなる
型1で起きているのは、高い音を「地声を強くして」取りにいく動きです。裏声は、声帯(のどの奥にある2枚のヒダ)を薄く引き伸ばし、合わせ方をゆるめて鳴らします。ところが地声を強めると、声帯を厚く閉じる力のほうが増えるので、切り替えとは逆の方向へ進んでしまいます。
つまり型1の人は、裏声を出す力が足りないのではなく、地声をやめられていないだけです。あくびの終わりや、こらえきれずに笑ったときに声が高くひっくり返るなら、裏声を鳴らす機能そのものは働いています。
最初にやる1つは、下から登るのをやめることです。低い音から上げていくと、地声を連れたまま登ってしまいます。出せそうな一番高いところに、ささやきに近い小ささで「フー」を置き、そこから下へ3秒かけて滑り降りてください。これを5回くり返します。
途中で声がガクッと太くなったら、そこが地声に戻った地点です。太くなる手前までを往復できれば十分です。高いところに小さな音を置けるようになったら、裏声の出し方3ステップへ進んでください。ため息を音にするところから、順に高さを足していく手順をまとめています。
裏声を呼び出すきっかけを5通り試す
裏声がそもそも出ない人に向けた呼び出し方が5つ紹介されるので、どれか1つでも声が高く軽く抜ける瞬間があるか、一緒に声を出しながら確かめてみてください。
裏声が出ない男性が多いのは、話し声と裏声の高さが離れているから
男性は声変わりで話し声がおよそ1オクターブ下がるとされ、ふだんの声と裏声の高さが大きく離れます。日常で裏声の高さを使う場面がほとんどないため、切り替えの操作に慣れる機会がありません。出にくいのは喉のつくりの問題というより、使った回数の差だと考えるほうが自然です。
加えて、切り替わった瞬間の声が地声とあまりに違って聞こえるので、「情けない声だ」と感じて無意識に地声へ引き戻しがちです。上の滑り降りる練習では、弱くて頼りない音が出ていれば成功です。
声変わりの時期に裏声が出なくなったとき
声変わりの時期は、声帯が長く厚くなる変化に、声を調節する側の慣れが追いついていない期間だと説明されています。そのため、声がかすれたり、意図せず裏返ったり、前は出ていた高さに届かなくなったりします。昨日は出た裏声が今日は出ない、ということも珍しくありません。
この時期は型を決めつけず、その日に小さな音量で出る高さだけを、短く出すにとどめます。無理に強い声で高さを取りにいくと、型1の押し上げるクセだけが残ります。音域がずれたあとの曲とキーの選び直しは、声変わりで歌えなくなったと感じたときの音域の測り直しにまとめています。
型2:裏声が息しか出ない・かすれるときは、伸ばしたあとの息の残りで見分ける
息しか出ない・かすれる裏声には、原因が逆向きの2種類があります。息が多すぎて声帯が合わさっていない場合と、喉を締めすぎて声帯が振動できていない場合です。見分ける手がかりは、3秒伸ばしたあとに息が余っているかどうかです。
- 息が先に尽きる:「サー」という空気の音が最初から最後まで続き、2〜3秒で苦しくなる。喉そのものは楽。息が多すぎる側です。
- 息は余るのに音が途切れる:音が出たり消えたりして、首や喉の奥に押さえつけられる感じがある。締めすぎている側です。
息が多すぎる側の人がやりがちなのが、「息が足りないから音にならない」と考えて、さらに強く吐くことです。息が多すぎる型の裏声は、息を増やすほど音から遠ざかります。
最初にやる1つは、出だしのハ行をやめることです。「ホー」「フー」は子音のところで先に息が出てしまうので、口を閉じた「ンー」か、小さな「ウー」に替えて、出だしから音にします。
音の輪郭が少し出てきたら、声帯の閉じを足していく段階です。手順は息が漏れて芯がないファルセットを直す練習に回数つきで載せています。すぐ息が切れて続かない人は、短く区切って重ねるやり方をファルセットがかすれる・続かないときの対処で確認してください。
締めすぎている側の人は、音量を半分に落としてもまだ途切れるかを試します。小さくすると鳴るなら、大きく出そうとして喉を固めていただけです。小さくしても詰まるなら、裏声より手前に喉へ力を入れるクセがあるので、喉締めの原因と力を抜く直し方から入るほうが早く進みます。
型3:高い裏声が出ない人と、低い裏声が出ない人では直す場所が違う
真ん中の高さでは裏声が鳴るのに、上か下のどちらかで消える場合、上は「頑張りすぎ」、下は「そもそも裏声の持ち場ではない」ことがほとんどです。
高い裏声だけ出ない
裏声は、高くなるほど声帯をさらに引き伸ばして鳴らします。ここで音量も一緒に上げようとすると、息だけが抜けるか、喉が固まって詰まるかのどちらかになります。高い音ほど強く出すものだ、という思い込みが原因です。
最初にやる1つは、高くなるほど音量を下げ、口を「ウ」の形にすぼめることです。いま出る一番上の音よりほんの少しだけ高い音を、半分の音量で3回出します。届いたら、またほんの少し上へ進みます。
息を細くまとめて高い裏声に芯を残していく手順は、ヘッドボイスの出し方と出ないときの原因で扱っています。
低い裏声だけ出ない
低いほうは、不調ではありません。裏声は高い音のための声帯の使い方なので、音を下げていくほど鳴りが小さくなり、ある高さから下は地声に切り替わるのがふつうです。低い音まで裏声のまま降りようとしていること自体が、出ない原因になっています。
曲の中で低めの音がふわっと軽く聞こえる箇所は、裏声ではなく、音量を落とした地声か、地声と裏声の中間の声で歌われていることも多いと言われます。最初にやる1つは、その音を裏声で探すのをやめて、ごく小さな地声で出してみることです。
中間の高さの扱い方は、地声と裏声の間の声が出ない・かすれる原因に続きます。
型4:家では出る裏声がカラオケで出ないのは、伴奏に声量を合わせにいくから
家で出る裏声がカラオケで消えるのは、喉の調子より先に、音量の問題であることが多いです。まわりの音が大きいと、人は無意識に声を大きくします。ロンバード効果と呼ばれる現象で、自分の声が聞こえにくいほど強く出そうとしてしまいます。
裏声は、音量を上げようとした瞬間に崩れやすい声です。家では小さな音量で鳴っていた裏声を、伴奏に負けない大きさで出そうとするので、息だけになるか、地声に戻ってしまいます。カラオケで直すのは喉ではなく、声を大きくしなくて済む環境のほうです。
最初にやる1つは、裏声のフレーズに入る直前にマイクを口へ近づけ、声は家と同じ小ささのまま出すことです。あわせて、リモコンでミュージックの音量を少し下げ、マイクの音量を上げておきます。自分の声がスピーカーから返ってくれば、押す必要がなくなります。
もう1つの違いは、家では裏声だけを単独で出しているのに、曲の中では直前まで地声で歌っている点です。地声の強さのまま裏声に入ろうとすると、切り替えが間に合いません。切り替える手前の1〜2音から、先に音量を落としておきます。
低い音から1オクターブ上へ「ブー」と跳ぶ、男性の声のお手本です。跳んだ先の音が、下の音と比べてどのくらいの強さで置かれているかを聴いてみてください。
曲の中の切り替わり目(換声点)を段差なく通す練習は換声点の段差をなくす3ステップに、1曲目や久しぶりのときに声全体が出ない場合はカラオケで声が出ない原因の場面別の切り分けにまとめています。
型5:裏声しか出ない人は、歌うときだけ地声を使っていない
裏声しか出ないのは、地声が出せないのではなく、メロディがつくと自動的に裏声へ切り替わる習慣がついている状態です。ふだん地声で話せているなら、地声を鳴らす機能はそろっています。合唱や声楽の経験が長い人に多い傾向がある、という報告もあります。
この型は「出ない」の反対に見えますが、困りごとは同じ場所にあります。低い音で声が小さくなる、言葉が聞き取りにくい、盛り上がる箇所で音量が上がらない。裏声は音量の幅がせまいので、全部を裏声でまかなうと、曲に起伏がつけにくくなります。
最初にやる1つは、歌う前に「しゃべる」ことです。Aメロの歌詞1行を、目の前の相手に話しかける声で読み上げます。次に、同じ声のまま最後の1音だけを2秒伸ばします。高さを合わせるのは後回しにして、まず話し声のまま音を伸ばせるかを確かめます。
低めの音域で5行ぶん試してください。話し声を歌の声として整えていく手順は、チェストボイスの出し方と鍛え方に続きます。
型は直るにつれて入れ替わる——次に出る「出ない」を先に知っておく
5つの型は固定の体質ではなく、直っていく途中で順番に入れ替わります。切り替わらなかった人(型1)が切り替えられるようになると、多くの場合、次に出るのは息っぽくてかすれた裏声(型2)です。これは後戻りではなく、1段進んだしるしです。
そのあとは、鳴るようになった裏声の上下の端が気になり(型3)、最後に曲の中やカラオケで使えるかが課題になります(型4)。週に1回、冒頭の「ホー」のテストを同じ条件で録っておくと、型が動いたことを自分の耳で確かめられます。
ただ、型1の「地声で押して詰まる」と、型2の「裏声を締めて詰まる」は、出している側の感覚がよく似ています。どちらも苦しくて音にならないからです。ここを取り違えると、力を抜くべき人が芯を足す練習を始めてしまいます。
ボイとれ!の診断は、自分の録音をお手本と聴き比べて「張り上げ・裏返り・息っぽい・仕上げ」の4タイプから近いものを選ぶ方式で、選んだタイプに合わせてレッスンが決まります。地声で押し上げる型1は「張り上げ」、息しか出ない型2や裏声しか出ない型5は「息っぽい」、曲の中で切り替えられない型4は「裏返り」に近く、それぞれ「力まず高い声を出す」「息っぽい声をしっかり鳴らす」「声の裏返りをなくす」から始まります。
押しているのか、抜けているのか、切り替えでつまずいているのか。自分の型に確信が持てないときは、声のクセを4タイプで見分けるセルフ診断のチェック項目と、この記事の「ホー」の結果を突き合わせてみてください。出ない理由が1つに絞れれば、今日やることも1つに決まります。



