音域の平均は男性・女性でどれくらい?地声・裏声の目安表と、平均内でも原曲キーが苦しい理由
音域の平均は、地声で男性がlowG(G2)〜mid2G(G4)前後、女性がmid1G(G3)〜hiC(C5)前後、幅は約1.5〜2オクターブが目安です。裏声の上限、low・mid1・mid2・hiの読み方、平均より狭いときの考え方、平均内なのに原曲キーが苦しくなる理由まで、男女別の表で整理します。

音域の平均は、地声で男性がlowG(G2)〜mid2G(G4)前後、女性がmid1G(G3)〜hiC(C5)前後です。幅にすると地声で約1.5〜2オクターブ、裏声まで入れて2オクターブ前後が目安になります。
ただし、音域の平均を調べた公的な統計はありません。ここで挙げるのは、ボイストレーニングの解説で目安として広く紹介されている範囲です。解説ごとに数音の開きがあるので、幅を持たせて示します。
先に伝えておきたいのは、この表が教えてくれるのは「どこまで出るか」だけだという点です。平均の内側にいるのに原曲キーが苦しい人は少なくありません。理由は、出せる高さと楽に使える高さの差にあります。
その差を生む声のクセは、数字にも自分の耳にも現れにくいものです。後半では、クセが測った数字のどこに隠れるかまで扱います。
男性・女性の音域の平均|地声・裏声・オクターブ数の目安表
男性は地声でlowG〜mid2G前後・裏声でhiC〜hiDまで、女性は地声でmid1G〜hiC前後・裏声でhiE〜hiFまでが、複数の解説に共通する目安です。音名は日本式(カラオケでよく見る表記)と国際式を併記します。
| 地声の下限 | 地声の上限 | 裏声の上限 | 幅の目安 | |
|---|---|---|---|---|
| 男性 | lowG(G2)〜mid1D(D3) | mid2G(G4)〜hiA(A4) | hiC(C5)〜hiD(D5) | 地声で約1.5〜2オクターブ |
| 女性 | mid1E(E3)〜mid1G(G3) | hiA(A4)〜hiC(C5) | hiE(E5)〜hiF(F5) | 地声で約1.5オクターブ |
男性の平均は地声で1.5〜2オクターブ、裏声はhiC〜hiDまで
男性の地声は、上限がmid2G(G4)前後という点で多くの解説が一致しています。高めに見積もる解説でhiA(A4)です。
下限は、lowG(G2)とする解説と、mid1C(C3)〜mid1D(D3)とする解説に分かれます。どちらを採るかで、幅は約2オクターブにも約1オクターブ半にもなります。
裏声として使われるのはmid2D(D4)前後から上で、hiC(C5)〜hiD(D5)あたりまでが目安です。地声の下限から裏声の上限まで通して数えると、2オクターブを少し超えます。
女性の平均は地声で約1.5オクターブ、裏声はhiE〜hiFまで
女性の地声は、mid1G(G3)〜hiC(C5)とする解説が最も多く、幅は1オクターブ半弱です。下限をmid1E(E3)やmid1F(F3)まで広げる解説や、上限をhiA(A4)と控えめに置く解説もあります。
裏声の上限はhiE(E5)〜hiF(F5)あたりが目安で、地声の下限から数えると2オクターブ弱になります。目安の数字のうえでは、男性より全体が高い位置にあり、幅は男性と同じか少し狭いくらいです。
解説によって平均の数字が食い違う理由
食い違いの大半は、「歌で使える範囲」で数えたか「声として出る範囲」で数えたかの違いです。前者は声楽的声域、後者は生理的声域と呼ばれ、後者のほうが上下に広くなります。
あるボーカルスクールの解説は、男性の地声を、歌うときでmid1C〜mid2G、発声練習のときでlowG〜hiAと分けて示しています。女性についても、発声練習で出る範囲をmid1F〜hiD、実際に歌う範囲をmid1G〜hiCとする解説があります。
つまり、よく見かける2種類の「平均」は物差しが違うだけで、矛盾しているわけではありません。
mid2G・hiCはどの音?low・mid1・mid2・hi・hihiの読み方
日本式の表記は、ラ(A)からソ#(G#)までの12音をひとまとまりの帯にして、低いほうからlow・mid1・mid2・hi・hihiと名前を付けたものです。ピアノの真ん中のドがmid2Cで、国際式のC4にあたります。
| 帯の名前 | 国際式での範囲 | 目印になる音 |
|---|---|---|
| low | A1〜G#2 | lowG(G2)=男性の地声の下限あたり |
| mid1 | A2〜G#3 | mid1G(G3)=女性の地声の下限あたり |
| mid2 | A3〜G#4 | mid2C(C4)=ピアノの真ん中のド、mid2G(G4)=男性の地声の上限あたり |
| hi | A4〜G#5 | hiA(A4)=mid2Gの1音上、hiC(C5)=女性の地声の上限あたり |
| hihi | A5〜G#6 | 男女とも、裏声の上限の目安より上 |
読み違えやすい点は2つあります。
- 帯の切り替わりはドではなくラです。mid2G#の半音上はhiAで、mid2Aではありません。国際式はドで数字が変わるので、同じmid2の帯のなかにA3とC4が並びます。
- hiは高い声の人専用という意味ではありません。高さの帯の名前なので、男性の曲にもhiAやhiBは普通に出てきます。
1音ずつの対応を確かめたいときは、音域測定のやり方にある対応表が使えます。
平均と比べる数字は「1回だけ出た最高音」から1音引く
平均と比べるときは、1回だけ出た最高音をそのまま使わず、そこから1音(半音2つ)下げた高さを「曲で使える上限」と見なすのが実用的です。先ほどの2つの解説でも、歌で使う上限は、出るだけの上限よりちょうど1音低く置かれていました(男性でmid2GとhiA、女性でhiCとhiD)。
たとえば、地声の最高音がmid2G(G4)まで1回届いた男性なら、曲で使える上限はmid2F(F4)あたりです。平均ちょうどのつもりで最高音mid2Gの曲を原曲キーで選ぶと、サビのたびに限界の音を踏むことになります。
反対に、3回続けて同じ声で出せた音を最高音として測ってあるなら、引かずにそのまま比べて構いません。比べる順番は次の3つです。
- 地声の上限の位置を見ます。男性はmid2G、女性はhiCが平均の目印です。
- 地声の下限の位置を見ます。上限が低めでも下限も低いなら、狭いのではなく全体が低い声です。
- 幅を見ます。地声と裏声を通して2オクターブ前後なら平均的、1.5オクターブを下回るなら上か下が何かで止まっている可能性があります。
絞り出した音を数えると、ここまでの比較がすべてずれます。3回続けて安定して出せる音を採用する測り方は、自分の音域の調べ方で手順を確認できます。
平均より狭くても歌が下手とは限らない|1オクターブと1音で歌える定番曲
音域の広さと歌の上手さは別の物差しです。カラオケの定番曲には、1オクターブと1音ほどの幅で歌い切れる曲がいくつもあります。
SMAPの「世界に一つだけの花」は地声でmid1E(E3)〜mid2F#(F#4)、夏川りみ版の「涙そうそう」は地声でmid2C(C4)〜hiD(D5)です。どちらも幅は1オクターブと1音に収まります。
幅が1オクターブ半に届かない人でも、キーを動かせばこうした曲は自分の声の位置まで運べます。キーは曲を移動させる操作で、幅を縮める操作ではありません。だから狭い人ほど「幅の狭い曲を選んでから、位置を合わせる」の順が効きます。
下げる数の出し方はカラオケのキー設定に、幅の狭い曲の候補はカラオケで歌いやすい曲の音域一覧にまとめてあります。
もうひとつ、平均より狭いという結果は、声そのものの限界を示しているとは限りません。訓練していない状態では、力みや、地声から裏声へ移るところの引っかかりで上が止まっていることが多いからです。
広げる側の手順は音域の調べ方と広げる方法が入口になります。男性で上が詰まる人は、詰まり方をタイプ別に分けた音域を広げる方法【男性】のほうが近道です。
平均内なのに原曲キーが苦しいのは、サビが居座る高さが上限に近いから
音域が平均の内側でも原曲キーが苦しいのは、曲の最高音ではなく、サビが長くとどまる高さが自分の上限に近いからです。出せる高さと、楽に使い続けられる高さは同じではありません。
スピッツの「チェリー」は地声の最高音がhiA(A4)ですが、難所はそこではなく、サビ全体がmid2G(G4)前後に張り付くところにあります。mid2Gは男性の地声の平均的な上限です。平均ちょうどの人にとって、このサビは限界の音が鳴り続ける時間になります。
back numberの「水平線」は、地声の最高音がmid2G、裏声の最高音がhiC(C5)で、数字は男性の平均とほぼ重なります。それでも楽ではないのは、mid2Gが曲のなかで何度も出てくるからです。
女性曲でも同じことが起きます。西野カナの「トリセツ」は地声の最高音がhiB(B4)と平均の内側ですが、そのhiBが曲の序盤から何度も現れます。
曲を選ぶときは、最高音が出るかどうかではなく、サビが居座る高さを3回続けて同じ声で出せるかで判定します。1回だけ届く音は、曲のなかでは使える音に数えません。
ミックスボイスの音域に決まった平均はない
ミックスボイス(地声と裏声の中間のような声)の音域には、地声や裏声のような定まった平均の数字がありません。解説によって、男性でmid2F(F4)あたりから上の数音、女性でhiA#〜hiB(A#4〜B4)あたりから上の数音と、示される範囲がまちまちです。
目を留めたいのは、その帯が男女とも、地声の平均的な上限のすぐ近くに重なっている点です。あるボイストレーナーは、男性のmid2F〜mid2G、女性のhiA#〜hiCを、地声と裏声が混ざった範囲として説明しています。
平均の上限とされる音は、純粋な地声のまま楽に出る高さとは限らない、ということです。平均内なのにサビで喉が苦しくなるのは、この帯を地声だけで押し切ろうとしているから、という場合があります。
張り上げ・裏返り・息漏れは、測った数字のどこに隠れるか
出せる高さと楽に使える高さの差を広げているのは、たいてい声のクセです。そしてクセは、測った数字の決まった場所を、実際より良くも悪くも見せます。
- 張り上げ(高音を喉で押し上げる出し方)は、地声の上限を高めに見せます。押せば1回は出るので数字は平均に届きますが、繰り返すと保てません。
- 裏返り(ある高さで声がスカッと裏声に抜けること)は、地声の上限を低めに見せます。裏返る手前を天井だと思い込みやすく、平均より狭いという結果になりがちです。
- 息漏れ(息が混じって芯のない声)は、裏声の上限だけを高く見せます。高い音は鳴っても、曲のなかで聞こえる音量になりにくいからです。
同じ「mid2Gまで出る」でも、どのクセで出しているかによって、次にやることは逆向きになります。力を抜くのか、つなぐのか、芯を足すのか。平均との差より、どの出し方でその数字になっているかのほうが、練習の行き先を決めます。
厄介なのは、歌っている最中の感覚では、押しているのか抜けているのかの区別がつきにくいことです。録音を聴き返しても、聞き慣れた自分の声のどこがクセなのかは、基準がないと判定しにくいものです。
声のクセ4タイプ診断は、張り上げ・裏返り・息っぽい・つながった声の4つに分けて、自分の出し方に当たりをつけるセルフチェックです。
ボイとれ!の診断も同じ4タイプで声を見分け、張り上げ型には「張り上げをやめる」、裏返り型には「声の裏返りをなくす」といったレッスンから順に組み立てます。
平均表で自分の位置を確かめたら、次は数字ではなく出し方のほうを一度のぞいてみてください。平均より狭かった人にも、平均内なのに苦しい人にも、手がかりはそちらにあります。



